一所不住



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千畝(ちうね)さんとセンポ

杉原千畝を題材にした映画が出来たのは知っていたが、タイトルや監督、主演など基本的情報を知らないままだった映画 『杉原千畝』 を観てきた。20年以上も前に観た 『シンドラーのリスト』 みたいな映画なんやろ、と勝手に思いながらスクリーンを見つめる。
結論から言うと、いかにもハリウッド的作品だった『シンドラー』よりも好感が持てる内容だった。

監督はチェリン・グラック、主演は唐沢寿明。恥ずかしながら2人ともよく知らなかった。主演俳優はテレビのCMで見かけたことがある程度で、おかげで斜に構えず作品と向き合えた。
日中戦争から太平洋戦争と、戦時下における外交官の姿を描くには、時代背景が劇的に過ぎて散漫な印象を受けかねない難しさがある。

ましてや諜報活動に長け、情報収集を主とした外交官であった杉原千畝は、本心を捉えにくい人物であったろうと思う。そういう意味では、二枚目俳優が演じた主人公は、陰の部分(裏の顔)を表現できなかった点において物足りなかったものの、好演していた。

映画は、ナチスに追われたユダヤ人難民を助けるために、日本を通過するビザを発行した「センポ」と呼ばれた外交官の人道的行為に焦点を絞っていた。
この映画に好感が持てたのは、単に1人のヒーローを賛美するに止まらず、多くの人の気持ちと行為がバトンタッチされたからこそ、6千人の命が救われた経緯を丁寧に描いていたこと。
そして監督の映画と千畝その人への敬意、真摯な姿勢が伝わってきたことである。

あの時代にリスクを覚悟で、自分の問題として難民救援に動いた大勢の人びとがいた。
翻って今、わが国は難民に門を閉ざしたまま、受け入れようとしない。人道的精神に欠け、全体主義国家へ邁進する政府を支持する国民の姿は、外国の人にはどう映るのやろ。
杉原や根井のように、気骨ある役人が現われる余地もないのか。

世知辛い世の中になったもんや。「いい人」ぶる、篤志家を気取る人が増えた割りに、現実は弱者は切り捨てられ、生死の瀬戸際まで追い詰められている。
杉原さんも「当たり前のことをしただけ」と話したそうだ。この「当たり前」が通じないから危うい。
肝は「人の世話をする、何も求めない」である。
by rurou-no | 2016-02-25 13:26 | 映画

逃げるが勝ち

見てはいないが、何かと話題のドラマ『真田丸』で、徳川家康がちょっと情けない描かれ方をしているそうだ。歴史マニアの脚本家による人物設定は、さもありなんと思わせる。
たとえ親兄弟であっても、対抗する勢力のどちら側につくかで敵同士となり殺し合わねばならない戦国時代に、戦から逃げ回って最後まで生き残った家康が天下を掌握した。

卑怯者、弱虫と非難されようとも、愚かで無意味な争いは避けた方が賢明というもの。
戦いがもたらすのは殺戮や破壊で、後には何も残らない。まったく無益の極みである。

この「逃げるが勝ち」を悪用したのが、昨年の安保法案審議における政府の態度だった。
争いを避けるための方策が、戦争をするために利用されてしまった。
まともに議論しようとせず逃げやごまかしに終始し、挙句の果ては議会の存在を否定する強行採決だ。民主主義は貶められた。もちろん「丁寧な説明」なんてあろうはずがない。

政府のバカどもは何も考えてないし、知ろうともしていないから、議論する言葉も持たない。このことが15日の衆院予算委員会でバレてしまった。無知丸出しは怖ろしいけど笑える。
民主党の山尾志桜里議員が、政権のメディア規制における「政治的公平」について質した。
彼女のフェイスブックに一部書き起こしているのを読んだが、首相の答弁がしどろもどろで、役人からレクチャーを受けた言葉の意味すら解しないまま喋っている。

「表現の自由」ついてのやりとりで、答弁の内容は何をもたらすのか、と問われ、「クイズのように聞くのは意味がない」と反論して思考停止状態を曝した。なんとかごまかそうと喋れば喋るほど中身が空っぽであることを強調するだけ。
とうとう「・・・総理は、知らないんですね」と、あきれられていた。

読みながら笑ってしまったが、こんなんが国の権力を握っているかと思うと背筋が寒くなる。
こやつは本当に何も知らないで、思い込みだけで物事を進めようとしているから危険なのだ。
それにしても、支離滅裂な首相や意図的に審議妨害した総務大臣は懲罰対象やないのか?
選挙民もせめて知性ある者を、自分たちの代表として選ばなあかん。恥ずかしいと思わな。

ところでメディアの萎縮はどういうこっちゃ。今こそ、徹底的に政府と対峙すべき時やないのかい。あまり右に寄りかかりすぎると、「政治的公平」が問われて電波停止やで。
by rurou-no | 2016-02-18 11:29

危機を喜々(笑い)に

《爆発で耳を吹き飛ばされた男が路上で探し物をしている。見かねた女性が「耳はあきらめて逃げて」と言うと、男は「耳にはさんでいたタバコを探しているんだ!」》

民族と宗教が混在しながらも、隣人として親しくしていた者同士が殺し合う悲劇は、「民族主義」という政治的イデオロギーが扇動した。わが国でも近ごろ流行っているやっかいなシロモノだ。
その舞台となったのが、ボスニア・ヘルツェゴビナの首都サラエボである。第2次世界大戦後最大の規模となったボスニア紛争の「サラエボ包囲戦」は4年近く続いた。

冒頭は、その包囲戦下ではやったジョークだという。誰だったか、落語のマクラで話していたのを聞いたことがある。悲惨な状況やのに思わず声に出して笑ってしまう。

月2回届く日曜版『グローブ』(2月7日付)の特集は「笑いの力」だった。
命が危険にさらされる極限状態の中で、ユーモアを力にして生き延びた人びとがいた。
《サラエボはやせた人ばかりだ。彼らなら最新のダイエット法について本が書ける》《読者はレーニンの本を手放せるだろうか?去年の冬、レーニンの本がよく燃えることがわかったからだ》

マクラで思い出した落語の 『首提灯』 は、シュールでブラックな一席やった。
上方落語では酔っ払いが道具屋で仕込み杖を買って、夜中にやってきた泥棒の首を皮一枚残して切ってしまう。江戸落語では酔っ払った町人に馬鹿にされた武士が、町人の首を切り落としてしまう。首がおかしな方を向いたり、ズレたりするので切られたことに気づくのだが、首が胴体から離れてもちゃんと生きているところが落語たるゆえん。どぶに転がり落ちた首を探す様は滑稽で、火事騒ぎの中、首を提灯のように前にかざして走っていく。

笑いの力は疑うべくもないが、ユーモアを解するには知性が求められる。
そこで絶望的になるのは、日々中国化していくこの国の政治だ。行き着く先は3代目つながりで気心が知れる北の体制か。アメリカと中国の悪いところばかり真似て窮屈でかなゎん。
頭が悪いから人の言うことが理解できないので、聞く耳を持たない。自分の思い込みだけが正しいと勘違いしている。相手を攻撃する口だけは達者。品位に欠ける。「寛容」という言葉を知らない。等々。連中を見てるとレベルの低さに唖然とするばかりなのだが、どうすりゃいいのさ。
by rurou-no | 2016-02-11 11:37

辺土に残した墨跡

30日に決勝があったAFC U-23アジア選手権で、日本代表は韓国に3対2で逆転勝ちした。
この大会はオリンピック予選も兼ねていたから、メディアは出場決定に大騒ぎしているが、もとよりオリンピックにはあまり関心がないので、冷ややかに優勝を称えたい。アジアトップは当然の結果、と受け止めた方が若い選手のためにもいいのではないかと思う。

さて、本題へ入ろう。現在解読中の古文書は 『口熊野周参見浦 弥市漂流物語』 で、天保年間に犬吠崎沖で嵐に遭い、破船漂流中にスペイン船に助けられて、カリフォルニア半島のメキシコに渡った栄寿丸乗組員の記録である。同じ乗組員の記録はいくつか残っているが、これは隣町周参見出身の堀弥市によるもの。彼は帰国後、大島遠見番所詰として勤めたそうだ。

驚くべきは船乗りたちの博学ぶり。記憶も確かに異国の言葉や生活、風習など活写している。
船頭の井上善助は20代の若者だったというが、世話になった家へ日本の文字を書き残した。
いろは四十七文字や人名などとともに、女文字の例として「恋しくハ多津年きてみよ以つミなる志の田乃森能うらみ久津の葉」と記す。

これは浄瑠璃や歌舞伎で有名な 『葛の葉子別れ』 の一節。和泉国信太の森で狩人に追われた白狐が安倍保名に助けられる。その際に怪我をした保名を葛の葉と名乗る若い娘が介抱して家まで送りとどける。2人は恋仲となり子供が生まれる(この子が後に陰陽師の安倍清明となる)。数年後、葛の葉は白狐であることが知れてしまい、「恋しくば尋ね来て見よ和泉なる信太の森のうらみ葛の葉」と書き残し信太の森へ帰っていく。

よくある動物報恩譚(恩返し)と異類婚姻譚(人間と動物の婚姻)の合せ技やね。
民話 『鶴女房』 が木下順ニによって戯曲 『夕鶴』 になったのは誰もが知るところ。山本安英のつう、宇野重吉の与ひょう、を観劇する機会を得たのは幸運だった。
『葛の葉』 の外題 『蘆屋道満大内鑑』 は、文楽や歌舞伎で度々上演される人気演目。
くずし字の中でもかな文字はややこしくて不得手な方だが、このたびは舞台を見ていたおかげで、なんとかクリアできた。漂流譚はメキシコからマカオへ向かうところ、まだまだ先は長い。
by rurou-no | 2016-02-04 12:42

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