一所不住



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観察学

赤瀬川原平さんが亡くなった。
《知的なひねりに満ちた前衛美術作品を手がけ、「老人力」「超芸術トマソン」などの著作、芥川賞受賞でも知られた画家・作家の赤瀬川原平(あかせがわ・げんぺい、本名赤瀬川克彦〈かつひこ〉さんが、26日午前6時33分、敗血症のため東京都内の病院で死去した。77歳だった。》  (27日付朝日新聞より引用)

「読売アンパン」、「ネオダダ」、「ハイレッド・センター」、「梱包作品」、裁判で有罪判決を受けた「千円札」、「超芸術トマソン」と「路上観察学会」等々、個人的に思い入れの強いものだけ挙げても、弱ってきた感受性を刺激されて動悸がするほどである。
もちろんこれらは「反芸術」から「超芸術」への活動の一面で、赤瀬川さんの守備範囲はつかみどころがないくらい多岐にわたっていた。そして文章のうまさは絶品の味わいだった。

とりわけ「トマソン」は凡庸な若者でもついていけそうな敷居の低さで、「観察」し「発見」する、それに意味を見出して言語化していく、という一連の作業の楽しみ方を教わった。
難しく考えないで面白がればええんや、と知ったことでどれだけ楽になったか。硬直化していた頭も身体も力が抜けて軽くなった。

「トマソン」は前にも取り上げたなと調べてみると、2007年2月20日に《創作意図のない物件を、視る側が発見する芸術であるから「見立て」や「借景」など高度なテクニック(遊び心)が要求される》と記してあった。
表現されたものに向かい合ったとき、どれだけ面白がれるか、そこに遊び心を感じるか、が基準になったのは赤瀬川さんの影響が大きかったように思う。

いつの間にか、自分に栄養を与えてくれていた人たちがこの世からいなくなることが多くなった。あんなふうに生きたい、あんなふうになりたい、とモデルにしていた人が一人ずつこの世から消えていく。今や自分がそういう年齢になったことを知り愕然とする。結局、何者にもなれなかった「ならず者」として老醜を晒しているだけやな。
by rurou-no | 2014-10-31 15:07

危機管理は大丈夫か

1週間前の日曜日(19日)、米軍の輸送機オスプレイ2機が紀伊半島最南端潮岬へ飛来し離着陸訓練をした。名目は「地震津波災害対応訓練」として救援物資と医療班の運搬だったが、本来の目的はオスプレイのデモンストレーションで、既成事実作りと考えて間違いなかろう。ついでに戦闘訓練候補地の調査も実施したのではないか。

実は主な災害対応訓練は別の場所で行っていて、海上へ流された人の救出訓練やヘリによる消火訓練などたまたま通りかかって見かけた。こちらは自衛隊や海上保安庁など関係者だけでやっていたようだ。国道も自衛隊車両や他府県ナンバーの救急車が頻繁に行き交っていた。

迂闊にもこの日にオスプレイが来ることを知らなかった。買出しに行ったスーパーで出会った同級生が世間話の中で教えてくれた。そういえばこのところ、毎日ヘリコプターが必要以上に低空飛行で飛び回っているなと感じていたが、訓練の練習か事前の下調べだったのかもしれない。

買い物のあと、いつもの日曜日と同じく午前中に歩くことにした。普段はほとんど人と会わない住宅地の路地に人の姿があった。狭い道に路上駐車の車が並んでいる。望楼の芝に近づくにつれて異様な雰囲気が伝わってきた。行く手にはどうやら見物らしい人が集まって同じ方を向いている。県道を挟んで芝側には3メートル間隔くらいに警察官が立ち芝地を囲んでいた。その向こうにオスプレイが駐機していた。こんなに過保護でええんかいな。

横目にしながらそのまま歩く。しばらくすると飛び立った音がした。朝出かける前にも家でこの音を聞いた。ヘリとはまた別種類の音である。次の日、芝生が燃えて消火活動をしていた、と耳にしたので確かめに行ってきた。オスプレイが着陸する場所は事前に芝生を短く刈り込んでいたが、それでも広範囲に焼けた痕跡があった。これはオスプレイの排気熱によるものらしい。これまでも墜落事故だけでなく火災の発生もあったそうだから、消防が待機していたのだろう。

実際の災害現場では草刈りや消防など手が回るはずもないため、オスプレイは使えないことがはっきりした。それにここら辺の地形を考えても、大量の物資輸送より少量を何ヶ所にも分けて運ぶほうが効果的であるのは言うまでもない。

近ごろ「防災」や「災害訓練」が錦の御旗、水戸黄門の印籠となって、反対しにくい空気が強まっている。意識的に距離を置かないと巻き込まれてしまいかねないので気をつけよう。
ところで19日は潮御崎神社の秋祭りだった。動員だけで地元住民が参加しない訓練てか?というよりも、もともと住民参加の想定はなかったんやろな。
by rurou-no | 2014-10-25 15:00

日記

告白するのはもっと後になってからのつもりだったが、「に」がきたからにはやむを得まい。
実はむかし、「日記」なるものを書いていた。始めたのは中学生になる前、小学6年生の正月からだったようだ(中学2年生の正月に「書き始めて2年になった」との記述がある)。
中学、高校と6年分のノートはダンボール箱に詰められて、実家の納屋に置いてあった。

その恥ずかしい記録は、手元に数冊だけ残して処分してしまった。思うところあってそれを取り出したところ、残ってあったのは1968年4月1日から69年2月22日までと、69年4月28日から7月2日までの分で、中学2年生の11ヶ月と3年生の2ヶ月ちょっとを振り返ることができた。おかげで遅刻ばかりしていた中学時代がばれてしまう。しょっちゅう腹痛を起こしていたみたいだし。

開いてみると、判読困難な文字が(当初は2日で1ページ、8月以降は1日1ページ)改行もなしに、ノートから溢れ出しそうな勢いで密集して並んでいた。
内容は田舎の中学生の変化の少ない日常が繰り返されるだけであるが、毎日きっちり1ページ分を文字で埋めているのが笑える。そして情けないほど語彙に乏しく、文章も下手くそだ。それに「づ」と「ず」の使い方を間違えている(例えば「かたずける」「むづかしい」など)。

4月/身長165.6センチ・体重43.5キロ、キング牧師暗殺される 5月/映画『天地創造』『恐竜100万年』、十勝沖地震、サッカー英アーセナル来日 6月/芥川龍之介『羅生門』、早船ちよ『キューポラのある街』、小笠原諸島帰島 7月/参院選全国区1位石原2位青島25位ノック、理科でカエルの解剖「他のものも解剖してみたい」 8月/映画『クレージー・メキシコ大作戦』『タイガース・世界は僕らを待っている』、1時間に149ミリの集中豪雨で飛騨川にバス転落100余人死亡事故、ソ連軍がチェコ侵攻 9月/身長166.9センチ・体重53.0キロ、大相撲・大鵬が優勝、ボクシング・世界フェザー級チャンピオンに西城正三 10月/メキシコオリンピック開催サッカー日本代表銅メダル、プロ野球セは巨人、パは阪急が優勝、メジャーはタイガースが優勝、カージナルス来日 11月/米ジョンソン大統領北爆全面停止発表、沖縄主席選挙で革新統一候補の屋良朝苗氏当選・第一声「即時全面復帰へ全力」、プロ野球ドラフト会議(東映→大橋、広島→山本、阪神→田淵、西鉄→東尾、東京→有藤) 12月/ノーベル文学賞川端康成、三億円事件発生、サッカー日本リーグ優勝東洋工業2位ヤンマー3位三菱重工、第9次南極観測隊19日に南極点到達 1月/箱根駅伝優勝日体大2位日大3位順天大、東大安田講堂攻防戦、身長167.7センチ・体重58.0キロ 2月/インフルエンザで学年閉鎖、金沢市内住宅地に自衛隊ジェット機墜落
by rurou-no | 2014-10-17 14:28

憲法九条をノーベル平和賞に

中秋の名月がスーパームーンだった先月に続いて、今月は「皆既月食」という月見愛好者にはうれしい天体観覧の贈り物があった。

ちょうど時間が重なっていたので、路地を右へ左へと曲がるたび正面に見えたり横に見えたりする月を見上げながら、いつものコースで夜の道を歩いた。
月が隠れる時はあいにく雲が邪魔をして、灰色の小さな円と弱弱しい光を確認できただけだったが、姿を現す時は雲間から「糸月」「眉月」「三日月」がくっきりと見え、「望月」まで贅沢な月見を堪能した。

「旬のコラボ」と、月食の月とともに写真に納まっていたのは、青色発光ダイオード(LED)の光。7日に発表のあったノーベル物理学賞は、「21世紀の光」であるLEDを開発した赤崎勇氏と天野浩氏、それを実用化した中村修二氏の3人に贈られることになった。

そのノーベル賞の平和賞受賞予測でオスロ国際平和研究所は、「戦争放棄をうたった憲法9条をもつ日本国民」をトップに挙げた。
神奈川県座間市の一女性が始めた憲法9条を平和賞に推薦する活動は、とうとう有力候補として取り沙汰されるまでになった。ノーベル賞の権威主義云々は別にして、9条の価値を広く認知させるために意義あることであった。発表は明日。

10年くらい前だったか、「憲法9条を世界遺産へ」というのがあって、地球上で争いを止められない人類を戒めるため、9条こそが世界共通の遺産として未来へ引き継ぐにふさわしい、と妙に納得した。「世界遺産」にしろ「ノーベル賞」にしろ、その広告効果は計り知れないものがある。こうして注目されることにより、ふだん無関心な人も平和について考えてくれるようになるのではないかと、甘い期待と願望を持っている。

どこの国においても権力者は、手にした大いなる権力を誇示したい欲求を止められない。これは病気である。ゆえに権力を持たない者たちは、権力者の弱点である知性を磨いて対抗するよりほかはない。無名人は神出鬼没で、アイデア勝負に撤すべし、だ。
by rurou-no | 2014-10-09 15:06

詭弁だらけ

この男はそもそも「ことば」なんて、はなから信じてないのやろな。
舌足らずな口調で読み上げる役人の作文を、そこで使われている「ことば」の意味まで理解が及んでいないのか、或いは都合のいい解釈でよしとしているのか、どちらにせよ「ことば」を大事にする態度が見られない。「ことば」なんて言いっ放しでいいんだと、詭弁に詭弁を重ねていく様は「ことば」への敬意の欠けらもない。

私たち人間が長い歴史の中で獲得してきた「ことば」は、自分を表現し相手を理解する重要な道具であった。互いに「ことば」へ信頼を疑わなかったからこそコミュニケーションが成立した。相互理解や意思疎通のための強力な武器であることに揺らぎがなかった。

その「ことば」は、たとえデタラメであっても自信ありげに断定することで強引に事実をねじ曲げてしまう、1人の男によって貶められた。その男が発する「ことば」は極めて空疎である。そもそも信じていないから、相手に伝えようという気持ちが表れない。だから相手の言うことにも聞く耳はもたない。最近は「見解の相違」という逃げ口上を覚えたみたいだし。

妄想の世界に行っている男をたしなめる者はいないのか。例えば、「積極的平和主義」という語を真逆の意味で使い、それが真逆の意味のまま定着しつつあり、日本でしか通用しない用語となってしまった。得意になって話すアベコベノミクス(またの名をアホノミクス)は、円安株高で海外の投資家と富裕層、そして大企業に恩恵をもたらしただけだ。マスコミ連中も大企業の一員としておこぼれに預かっているから、景気が良くなったなんて一面的な報道をしてうれしがっている。本質は経世済民とはほど遠い政策であることは一切伝えない。そして世界の中で相対的に国力が低下していっている不都合な真実も。

近ごろ言い出した「地方創生」なんてのも選挙用であるのは見え見えで、地方は切捨てられたままである。「女性が輝く社会」といったって、女性でありながら女性の社会進出の足を引っ張ってきたお気に入りを大臣にするくらいだから底が知れる。これほど「ことば」を軽く扱い、詭弁を弄する手合いの口を塞ぐ手はないものか、と腕組みする。

9月27日、御嶽山が噴火した。かつて山歩きが好きで信州の山々を踏破したことのある者として、噴火に遭遇した登山者は他人事とは思えない。改めて、地震列島、火山列島に住まいしていることを思う。
by rurou-no | 2014-10-01 13:33

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