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一所不住



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拵え(こしらえ)

昨日(27日)、新しくなった歌舞伎座の開場式が行なわれたそうだ。
前回の続きを、との指令が某筋からもたらされたので、関係する用語から「拵え」。
「ごはん、こしらえたで」と、ふだんから使われている言葉ではあるが、歌舞伎ではそれとは別に、顔(化粧)をしたり、衣裳を着付けたりするときにも、「拵える」という言い方をする。
ほかに扮装や役の気持ちを表す場合なども「拵え」となる。

「紙衣」の衣裳は、手紙を着物に仕立てているので、文字(恋文)を着ている拵えとなっている。
いきなり脱線して申し訳ないが、今読んでいる 奥泉光 『虫樹音楽集』 の中に出てくる、全身に刺青が彫られているバスクラリネット奏者のザムザ。まるで「紙衣」だ。以下引用。

「刺青の絵柄は文字。ひたすら文字ばかり。英語、日本語、ドイツ語、中国語、フランス語、ヘブライ語、ロシア語、アラビア語、韓国語、ギリシア語、タイ語、ウルドゥー語、スワヒリ語、チトゥン語、ベンガル語・・・世界のさまざまな言語の文字ばかりでなく、アヴェスター語、オスマン語といった死滅した古代語の文字、マヤ文字、楔形文字、インダス文字等、あらゆる種類の象形文字、人工言語の記号、数学や化学の記号までが、みっしり軀に彫り込まれているのだ」


刺青といえば、西加奈子 『ふくわらい』 では、全身にタトゥーを入れる主人公の鳴木戸定。
「右の肩には、アムステルダムで緑色のハチドリを入れ、左の腰には、コペンハーゲンでコモドオオトカゲを入れた。右の腰には、プノンペンで群生する黄色いマリゴールドを、背中には、サンフランシスコでバオバブの木を入れた。右の尻にはマカオで夜光貝を、左の尻にはビエンチャンでアンスリュームの花を、腹には大きな白鯨を、胸と胸の間には羽を広げたオニヤンマを、左の太ももには跳ねあがるアフリカツメガエルを右の太ももにはこちらを見つめる大きなヤクを」

いかん、いかん。愛之助のことを書くはずやったのに、またまた長い道草をしてしまった。
小生が知るのは愛之助襲名後、初役続きの中、ひたむきに舞台を務めていたころ。
驚いたのは『新口村』で、忠兵衛と孫右衛門の二役早替りをする片岡仁左衛門を助けるため、忠兵衛の拵えをした愛之助が仁左衛門そっくりだったこと。その姿を目にして、松嶋屋を立派に継いで行けると確信した。この10年間の活躍は歌舞伎ファンのみならず、誰もが知るところである。
by rurou-no | 2013-03-28 13:37 | 言葉・本

紙衣(かみこ)

お土産(?)に買ってきてくれた本から、今日のタイトルを思いついた。
松島まり乃 『歌舞伎修行 片岡愛之助の青春』 って、これ10年前に出たやつですけど。まぁええ。
ここら辺ではこの手の本は書店に置いていないし、図書館にもないから、まことにありがたい。

欲しい本はアマゾンで注文すればいいのに、とお考えの向きもおられようが、いささか古い考えの持ち主はそうはいかない。季刊誌『コトバ』第11号特集「本屋に行こう」で、各界の本好き、書店好きがそれぞれの考えを述べていて、これが実に面白い。大いに共感するものである。

本というのは人と同じで、出会いだと思う。新刊本が次々と出版されており、あれも読みたい、これも読みたいと目移りすれど、ひとりが一生に読める本なんてたかが知れている。まして、アマゾンなんかであれもこれもと注文し出すと、すぐに破産するのは目に見えている。

たまたま入った本屋で目に入った本、「買ってくれぇ」と向こうから訴えてくる本、それこそが本との出会いであって、今読むべき本だというスタンスで本を読んできた。もちろん人から薦められたり、書評を読んで興味をもった本もある。それらをひっくるめて、「出会った」と認識している。

近ごろは、ほとんど連れ合いが図書館から借りてくる本を読んでいる。おかげで、これまで出会うことのなかった女性作家の本や、若い作家の話題作を読む機会が増えた。

と、また前置きが長くなってしまった。
「紙衣」は、近松門左衛門作 『廓文章』 で、大店の若旦那伊左衛門が新町吉田屋の遊女夕霧に通いつめて、散財のあまり家を勘当され、落ちぶれた姿となった「やつし」の衣裳。夕霧からの手紙をつなぎ合わせた紙の着物という見立てから、うらぶれた姿を表している。

伊左衛門・片岡仁左衛門、夕霧・坂東玉三郎の舞台は華々しく艶やかだった。この芝居は出こそ寒々としたわびしい雰囲気だが、最後は勘当が解けて千両箱が届き、ハッピーエンドとなるので「なんや、あほらし」てなもんだ。

さて、愛之助について、と思ったところで字数が尽きた。長い前置きは、いかん。
by rurou-no | 2013-03-25 13:49 | 言葉・本

シングルな3日

連れ合いが3日間、家を空けることになった。
「ヒマやと思うし」と、残していったのは図書館から借りてきた3冊の本。どれも新入荷本ばかりなのか、カバーに帯(作家の椎名誠はこれを「腰巻」と呼んでいた)まで付いたままだった。

赤坂真理 『東京プリズン』 、朝井リョウ 『何者』 、中島京子 『のろのろ歩け』 (以上、読んだ順番)。ちょうど読んでみたいと気になっていた本を、なぜ知ってたんやろ。
それぞれから、フムフムとうなずいたことばを拾い出してみよう。

『東京プリズン』は、アメリカ・メイン州の小さな町へ留学した16歳のマリが、戦後連合国によって行なわれた「東京裁判」(極東国際軍事裁判)で問われなかった、天皇ヒロヒトの戦争責任があるか否かについてディベートに挑むという内容。学校で学ぶ機会もなくあいまいにされたままの、近現代史を問い直す意欲的な試みである。誰も責任をとらないあり方は、この国のしきたりなんやろか。

「桁外れの死者が出ると、その死には目的があり、その目的は崇高なものであると言わなければ、人の心がばらばらになってしまう」「人は自分をを支える物語なしに生きてはいけないんだよ」と、アメリカ南北戦争について話す同級生のアンソニー。

『何者』は就活大学生5人の日常。みんな何者かになりたくてフェイスブックやツイッターで発信する、今どきの学生たち。アカウントを2つ持ち、表の顔と影の部分の本音を使い分ける複雑な心理。
サワ先輩のことば「短く自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉のほうが、圧倒的に多いわけだろ」「だから、選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表しているんだと思う」

『のろのろ歩け』は異国での3話。『北京の春の白い服』では茶湯(チャータン)の屋台の主が「慢慢走(マンマン・ゾウ)」=のんびり行けや、と声をかけてくれた。『時間の向こうの一週間』のイーミンは雲南へ行くという。そこは「失敗者的天堂」=負け犬の楽園(ルーザーズ・ヘブン)といわれるリラックスの地だとルー・ビン。『天燈幸福』で「仙人術」をマスターした趙先生は「私は薬など使わなくても、台所にあるあらゆるものが病気や体の不調を治療できることも学びました。たとえば酢、塩、トウガラシ、ネギ、胡椒、塩。みんな薬になる。にんにく、白菜、キャベツ、スイカの皮もそう」と語る。
by rurou-no | 2013-03-21 14:27 | 言葉・本

玲瓏(れいろう)たる呼び出し              

大相撲春場所も中日を過ぎたところで、例によって角界ネタでおつきあい願いたい。
今場所は横綱白鵬が独走しており、もっぱら関心は全勝優勝するかどうかへ移っている。
それはともかく、取り組みそのものを楽しんでいる者として気になるのは贔屓力士の動向だ。

連日館内を沸かせているのは、地元大阪府出身の豪栄道と勢、そして兵庫県出身の妙義龍の3人。特に大関への足懸かりとしたい関脇豪栄道は好調で懸賞幕も多くかかる。勢と妙義龍は星こそ上がらないが積極的ないい相撲をとっているからよしとしよう。

相撲(角力)は、単なる力比べや勝負事にとどまらず、かつては神事や農耕儀礼としての一面もあった。興行として成立する過程でそれが様式化され、現在に到るもさまざまな古いしきたりが形として残っている。
力士の大銀杏に締め込み、土俵上で行なう水や塩による浄め、拍手や四股をはじめとする取り組みまでの所作、神職装束の行司など、ひとつの様式美である。

対戦力士名を告げて土俵に呼び込む「呼び出し」も、そうした一連の様式に組み込まれている。
今回は「れ」からだったので、「厲声」(れいせい)とタイトルしてその呼び出しのことを取り上げるつもりだった。ところが、どうも「厲声」は大きな声を出すという意味の中に、荒々しいというニュアンスが含まれて少し違うかな、と新明解さんで確かめようとしたら「玲瓏」という言葉が目にとまった。

【〈玲瓏〉】①玉などが触れあって、いい音をたてる形容。また、そのような音・声。「~とした声」②美しく澄みきっている様子。(後略)

これや! とこちらを採用。実は今、呼び出しの重夫さんに注目している。その品と艶のある美声に魅せられてしまった。それまでは画面だけを見ていて知らなかったが、連れ合いに「いい声の呼び出しがいる」と教えてもらってから補聴器をしてネットの相撲中継を開くようになった。
呼び出しの声も芸のうち、彼の声は一級品だ。

残念ながら序列が最優先の角界では、この一級品も早い時間にしか登場しない。三役クラスの取り組みは、どちらかというと「厲声」の呼び出しになるのは、どうにかならないものか。
by rurou-no | 2013-03-18 14:32

デフレ

世はデフレ(恒常的な物価下落)で、この状態から脱却しなければならないらしい。
半可通を自認し、且つ経済活動への貢献度が極めて小さい小生が、エラそうなことをいえる立場にないのは承知しているが、流れ(「で」から始まるタイトル)でこうなってしまった。

デフレによって儲けが少なくなった企業は、守りの体制に入って投資や労働コストを抑えようとしたせいで経済の活力が失われた。強い経済を取り戻すために金融緩和で経済を動かし、物価を上昇させなければならないというわけだ。
つまり、経済疲弊と失業者や非正規雇用者ばかりな労働の実態をデフレのせいにしている。

うまい具合に、哲学者の内山節さんが朝日新聞のインタビューに応えている記事があった。
「世界で貿易や工場建設に使われるお金より、金融商品で稼ごうと国境を超えて飛び交う投機マネーのほうがはるかに多い。実体経済と結びつかないお金がお金を生み、総額さえ正確につかめない。貨幣を増やしても実体経済に必ずしも回らない。主要国の共通していえる構図です」

「お金ですべてを得る市場経済ではなく、何らかのコミュニティーにつながり、みんなで生きる経済。助け合いながら、社会的な役割を果たせるような働き方をしようという動きが強まっています」
「多くの人たちが、富を貨幣で換算することに疑問を強く持ち始めています」

モノの価値を実感するのは役に立つかどうかの「使用価値」でありこれに対して、市場で取り引きされる「交換価値」を「貨幣で換算できないものは反映できない」とし、「マクロ経済からみた『富』の数字と、私たちの生活実感としての『豊かさ』が乖離していったのです」と話している。

「成長すれば何でも解決できるという古い意識にとらわれている人たちが、内輪で同じことを言いあっているうちに、それが真理のように思えてくる。金融緩和で物価を引き上げ、デフレから抜け出そうというリフレ政策は、共同幻想のようなものです」
「市場の拡大が極端な格差社会を生むようになった今日では、これまでの論理は通用しません。物価が上がる、上がらないという狭い論争はもうやめて、地域、地域にふさわしい持続可能な労働の場をつくっていくことを考えるべきです」
by rurou-no | 2013-03-14 15:35

浮かれてる場合やないで

やれ円安だ、株高だ、と巷がやかましい。
あべこべのエコノミクスで、エコノリスクが増大して大変やと心配していたら、逆に「バブルの再来」と煽る連中までいるではないか。いったいどうなってるんや。

恩恵を受けているのは一部の大企業や投資家だけなのに、そのおこぼれにありつこうとするマスコミのクズ連中が騒ぎ立てるから、勘違いしたり騙されたりして喜んでいる「善良」なる市民たち。
ほんま、浮かれてる場合やないで。

2011.3.11の大災害から2年、死者1万5881人、行方不明者2668人(3月8日現在警察庁まとめ)、避難者31万5196人(2月7日現在復興庁まとめ)。
原発事故の避難者は15万人とも16万人ともいわれている。
数字が大きすぎて現実感が乏しくなるが、被災は過去の出来事ではなく今も続いているのだ。

政権が代わったことにより土建屋政治が復活し、災害復興においてさえ露骨な利権の奪い合いばかりで、いまだに住民の生活は置き去りにされたまま。
新しいまちづくりを住民側が提案しても無視され、従来型の大型公共工事(これは自民党の失政の最たるもの)中心のやり方を押し通そうとする。

原発事故は、もはやなかったものにされかねない。事故原因の究明にいたっては嘘に嘘を重ねる東電にいいように誤魔化され、国策として推し進めた反省もなく再稼動に前のめりな姿勢をみると、あんな大きな事故すら他人事でしかない欲ッタレどもの卑しい心性に反吐が出る。

ほんまにこんなんでええんか、もっと真っ当にちゃんとやらなあかんで。
田舎では重要なライフラインであるガソリン代がじわじわと値上がりしている。
企業や投資家が儲かった分を支払うのはわれわれ生活者であり、国の借金は将来世代につけが回る。こんなデタラメを許してたらあかんのや。早う目を覚まさなあかん。

とまぁ、今日は久々に文句たれジジイのうるさい遠吠えでおそまつさん。
     軍拡の弁飛ぶ議会寒戻る  (近江八幡市)藤本未生 = 朝日俳壇
by rurou-no | 2013-03-11 13:37

盧舎那仏像(るしゃなぶつぞう)

「盧舎那仏像」とは、奈良東大寺の「大仏さん」のこと。
初めてこの大仏さんを見たのは、小学校5年生の修学旅行のときだった。48年前になる。
ちょうど20年前には、「発願1250年慶讃法要」とかいうものにあわせたイベントのコンサートを仕切ったこともあった。ま、そんなこたぁどうでもいい。今日は大仏さんについて書くつもりやない。

無理やり大仏さんにご登場願ったのはほかでもなく、「る」から始まる語として思いついただけ。
ここだけの話だが(ってここだけの話にならんけど)、近ごろ連れ合いが「お経」にはまっている。
別に信心深くなったわけやのうて、どうやら葬式や法事やらで聞く機会が多くなって、音として聞くうち音楽的に興味が湧いてきたらしい。

夕食後にうたた寝をする小生の耳元で、お経をぶつぶつやり始めるものだから思わず、「あれっ、オレいつ死んだんやろ?」とびっくりさせられる。
なんでも連れ合いに言わせると、「お経は死んだ人より、生きている人に聞かせなあかん」ようなありがたい意味のことばが並んでいるという。

パソコンからプリントアウトしたお経の文を見せてもらっても、古文書にも出てこない難しい漢字ばかりで小生にはとても読めない。音として聞いても覚えられそうにないし。
それはともかく寝ているときにお経をやられると、起きるのを忘れてそのまま永遠の眠りについてしまいそうな気がするから勘弁してほしい。

経典はサンスクリット語の音韻を漢字に当てた、そのまま輸入したので読めないのは当たり前だ。
連れ合いはその字形が面白いからと、カンヴァスに描いて所属するグループの絵画展に出展しようと企てている。
これはいいアイデアだと思う。読めない漢字も図形としてみれば、なかなか趣きがあってよろしい。

わが家の「お経ブーム」もこうして、「さぼさぼー もらもらー もきもきー りといん くりょーくりょー けも」 「憶念したまえ、行為をなしたまえ、成就したまえ」と唱えながら、かたちを成していく。
by rurou-no | 2013-03-07 11:25

スワロウテイル

前回久しぶりに映画のことを書いていたら、いったいいつの時代や!と自分にツッコミを入れたくなるほど、むかしばなしになってしまっているのに気が付いた。
しょうがない。映画館が1軒もない田舎の町で暮らしていると、必然的にこうなるのだ。
思い出の中で生きているように受け取られるのは不本意である。決してそんなつもりやない。

と、引き続き映画のタイトルをしりとりして『スケアクロウ』。
1973年、ジェリー・シャッツバーグ監督作品。主演はジーン・ハックマンとアル・パチーノ。
数年ぶりに刑務所を出所した男と、長い航海から帰った男が偶然出会って意気投合し、それぞれの目的地へともに向かうロード・ムービー。金沢市の香林坊にあった映画館で観た。

ジーン・ハックマンは英国系アメリカ人で、『俺たちに明日はない』(67)、『フレンチ・コネクション』(71)、『ポセイドン・アドベンチャー』(72)などに出演。
アル・パチーノはイタリア系アメリカ人で、『ゴッド・ファーザー』(72)、『セルピコ』(73』、『狼たちの午後』(75)などに出演していた。

『俺たちに明日はない』=原題『ボニーとクライド』(アーサー・ペン監督)は、アメリカン・ニューシネマの嚆矢をなす作品であり、『卒業』(67、マイク・ニコルズ)、『ワイルドバンチ』(68、サム・ペキンパー)、『イージー・ライダー』(69、デニス・ホッパー)、『明日に向かって撃て』(69、ジョージ・ロイ・ヒル)、『真夜中のカウボーイ』(69、ジョン・シュレシンジャー)など、新しい米映画の潮流を示した。

ここまできたところで、『スケアクロウ』は前にも取り上げたかもしれぬと調べたら案の定あった。
急遽タイトル変更で『スワロウテイル』。これは岩井俊二監督、96年の作品。移民たちを主人公にした無国籍風な映画でなかなか面白っかた。岩井監督は『Undo』(94)、『Love Letter』(95)、『打ち上げ花火、下から見るか?横から見るか?』(95)、など観た。

やっと最近の若手監督やと安心したら、もう20年近く前になるやないか。
やっぱり古いけど、こんなジジイやさかいにしゃぁないってことで。
by rurou-no | 2013-03-04 11:17 | 映画

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