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一所不住



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モディリアーニ

フェルメール『真珠の耳飾りの少女』を目玉に、「マウリッツハイス美術館展」が神戸市立博物館で、大阪の国立国際美術館では、「エル・グレコ展」が開かれている。
美術展好きは、両館をハシゴして自分勝手に「芸術の秋」と洒落ていることだろう。

フェルメール、グレコともに、ここで前に取り上げた。彼らは好きな画家で、その作品は自分の中では十分に堪能したという思いがあって、今回は特に食指は動かない、とは負け惜しみでなく。
もちろん、余裕があれば出かけるのはやぶさかではないが、諸般の事情はそれを許さないのだ。
それでいい。今はむしろ和泉市の弥生文化博物館で開催中の「縄文の世界像展」に魅かれる。

グレコの特徴である細長い人物のフォルムを思い出しているうち、ジャコメッティの彫刻、そしてモディリアーニの絵と連想していった。モディリアーニの描く女性の肖像はどれも、細長い首の上に細長い顔が乗っている。目に瞳が描かれない彼女らは、はかなげでとても魅力的である。

モディリアーニはイタリアのトスカーナ地方でユダヤ系イタリア人として生を受け、21歳のときパリへ出て洗濯船のあったモンマルトルにアトリエを構える。その後モンパルナスへ移り、ピカソやユトリロ、キスリングら錚々たるメンバーと交友を結ぶ。アルコールと薬物に溺れ、破滅型の天才だった。
彼の生涯は半ば伝説となり、『モンパルナスの灯』(1958)、『モディリアーニ 真実の愛』(2004)と2度映画化されている。

タイトルが「も」からだったので「モディリアーニ」を採用したが、美術に関する記事は久しぶりだ。
美術展はもう何年も御無沙汰だし、美術書や図録なども手元に置かないまま過ごしてきた。田舎で暮らすというのはこういうことなんやろう。
なにしろ吉永小百合主演の映画『北のカナリアたち』すら、車で1時間の映画館で上映しないから。

感性がどんどん鈍くなっていきそうな気がして心細い。
都会の文化レベルと田舎の自然環境、両方求めるのはないものねだりの欲張りか。
田舎でしかやれないことがあるのに、生活に手一杯でおもいきり遊んでないのはもったいないぞ。
by rurou-no | 2012-11-29 17:09 | 美術

いじめられた子ども

昨日(23日)付、朝日新聞の1面左肩に「いじめ半年で14万件」の見出しで掲載された記事を引用する。<文部科学省は22日、いじめの緊急調査の結果を公表した。今年4月から約半年間に全国の小中高校などが把握したいじめの件数は14万4054件で、前年度1年分の2倍を上回った。文科省は「いじめのわずかな兆候でも見逃さないという意識が高まり、大幅に件数が増えた」とみている。>

14万4千という数字にたまげた。つまり、少なくともこれだけの子どもたちがいじめられ傷ついているということだ。カウントされなかったいじめはいったいどれだけあるのか。
対象校の全体数はわからないが、関連記事によると1000人あたりの認知件数は10.4となっている。100人に1人強がいじめられている計算になるが、事はそう単純ではないだろう。

調査方法やカウントの仕方が統一されていないため、前年度の4倍増ペースでも急に増えたわけではないと思う。数字はあくまでも参考にしかならない。それにしても多すぎる。
数値化するとかえって実態が見えなくなるから、想像力を働かせたい。

強者が弱者をいじめるのは今に始まったことではなく、また子どもたちだけの問題ではない。
世の中のシステムがいじめの構造で成り立っており、子どもはそれを感じ取って真似ているのだ。

政治の混乱に乗じ志士気取り国士気取りになって威勢のいい、差別主義者で排外主義者の連中を持ち上げ宣伝に努めるマスメディアは、いじめを助長しているに等しく悪質である。
米軍基地を一方的に押し付けられている沖縄の人は、日本人にいじめられているのではないか。
家を土地を追われて避難した福島の人は、帰れないまま忘れられるのか。これもいじめに通じる。

私たちはもっと社会的ないじめ、政治的ないじめに敏感になるべきである。
そして子どもたちには、学校へ行かない自由を与えたい。世界の広さを教え、学ぶ環境を整えてあげるのが大人の役割だと思う。夢中になれるものを見つければ、いじめなんかばかばかしくなるし、たとえいじめに遭っても気にならなくなるやろから。
by rurou-no | 2012-11-24 14:13

古文書は面白い

1年半ほど前から古文書の勉強を始めた。
「人生50年」をとうに過ぎて、の手習いは、ことのほか面白くてやめられない。

江戸時代、明治時代の公文書の中から、郷土に関係する文書を主なテキストとしているが、わずか100年ちょっと前の文字なのに、なかなか読み進めない。
初めのうちは「くずし字」を目にして、まるでアラビア文字を眺めている趣きでお手上げだったが、だんだんと一つひとつの「字」が形を成し、どうやら同じ日本語らしいことがおぼろげにわかってきた。

「かな文字・変体仮名」=安(あ)、以(い)、宇(う)、衣(え)、於(お)、など五十音に対応している。
「異体字」=標準的な字体以外の漢字。パソコン文字にはない。
「返読文字」=有之(これあり)、不残(のこらず)、乍恐(おそれながら)、無油断(ゆだんなく)、等。
「略字」=文字を略して記号のような字になっている。

覚えなければならないことは山ほどあり、難読文字(やたら画数の多い難しい字や当て字)、難解語(現在使われている言葉でも意味が違ったり、同じ言葉であってもまったく相反する意味で用いたりする)などが頻出する上、公文書の書記係といえどもきれいな字を書く人ばかりでなく、中には腹立たしいほど個性的な字もあり、解読をしているうち、おのずと頭は沸騰してしまうのである。

一方で、古文書には沸騰した頭を冷ましてくれる役割ともいえる「慣用文」というのがあって、文末などに必ず使用される文言がある。これらが出てくると一息ついてホッとする。
御座候(ござそうろう)、無御座候(ござなくそうろう)、仍如件(よってくだんのごとし)、不及申(もうすにおよばず)、可申出事(もうしいずべきこと)、被差遣(さしつかわされ)、被仰付候(おおせつけられそうろう)、可有之候(これあるべくそうろう)、奉畏候(かしこみたてまつりそうろう)、相極候(あいきめそうろう)、候得者(そうらえば)、候得共(そうらえども)、等々。

毎日1~2時間、古文書の学習に当てている。学校へ通っていたころにこれだけ勉強していれば、なんて後悔先に立たず、やけど、勉強はいつやってもええんやから。
by rurou-no | 2012-11-17 15:39

近日息子

朝ごはんのとき、「そろそろ店にクリスマスの飾りをしなけりゃ」と連れ合い。「まだ11月やど」と返すと、「けど、アイルランドではハロウィンがすんだらクリスマスの準備を始めるって言ってたし」。

おととい(8日)、古座川町の「ダーチャやまんば」で、守安功さん(アイリッシュ・フルート、リコーダー、ホイッスル)と守安雅子さん(アイリッシュ・ハープ、コンサーティーナ、バゥロン、スプーンズ)によるアイルランド音楽のコンサートがあった。

もともとアイリッシュの音楽は好きだから、フォークソングやダンス音楽をもっと聴きたかったというところはあったものの、アットホームな雰囲気を優先させたと思われるプログラムは、オペラ歌手であるオーナーをステージに誘い出しその歌声を存分に味わうという贅沢な演奏会となって、ご馳走を腹一杯いただいた満足感に浸った。

アイルランドではハロウィン(10月31日)が明けた11月1日は新年。そのあとはクリスマスの準備に忙しくなる、とは演奏会の中で守安さんの話。クリスマスなんて縁のない人間にはひたすらやかましくて迷惑なだけだが、商売人にとっては大事な商機なのである。

上方落語『近日息子』は、「アホ作」「ヌケ作」と近所から言われている息子の作次郎が親父さんに意見されるところから始まる。芝居小屋の看板に「近日」とあるのを見て、明日からと勘違いした息子に「商売人は先へ先へと気を利かしていかなあかんねん」と普段から気ぃ利かせよと諭したところ、親父さんが出ぇたいときに出さなんだら腹具合が悪いとボヤくのを聞いて医者を連れてくる。医者がどこも悪くないのに、と首を傾げたのを見て、よっぽど悪いと思い込み親戚へ電報を打ち葬儀屋の手配までして棺桶を担いで帰る。表には鯨幕を張り忌札まで貼る念の入れよう。その様子を見た近所の人らは親父さんが亡くなったと騒ぎ出す。親父さんに叱られた作次郎、「忌札見て見て騒いでるやなんて、近所の人も無学なあわてもんが多ぉまんなぁ」「ご近所の人がなんで無学なあわてもんやねん」「よぅ見てもろとくなはれ、忌札の肩に『近日』と書いておます」で、サゲとなる。

そういえばどこかの首相が「近いうち」と言ったら、その時期を巡って欲ったれどもが右往左往している。こちらは笑い話にもならない低レベルやから処置なしや。
by rurou-no | 2012-11-10 11:26

静人日記

本屋に並んだのを見つけて、久しぶりに本を購入した(代金を払ったのは連れ合いだけど)。
文庫本になった、天童荒太著『静人日記』。新聞の広告には『悼む人』の序章とも続編ともあった。
今度は表紙が船越桂さんの装画だったのですぐにわかった。どうやら主人公の坂築静人と船越さんの作品のイメージが重なって脳内にインプットされているらしい。

『悼む人』と違うのは、旅を続ける静人の日々を綴る日記形式となっていること。12月7日から翌年6月30日まで半年余りに亘る毎日の、かけがえのない一人ひとりの生を覚えておく記録である。
読み進むうち、静人の旅に同行しているような奇妙な錯覚が生じ、からだが震え心がざわつく。

雨に降られ風に吹かれ寒さに身を竦ませて、疲れたからだを労わりながら重い脚に鞭打って歩く。
何を食べ、どこで寝るのか。旅の途上にあっては思考もシンプルになる(これは自分の場合だが)。
小説の中とはいえ、そのことがとても気になって仕方がない。

著者は昨年6月1日(大震災からほぼ80日後)、陸前高田市と大船渡市を訪れて「可視と不可視のはざまでー悼む人、被災地にてー」として、本の最後に収録していた。長くなるが引用する。

「被災現場の圧倒的な広大さを前に、自分がこれまで正常な距離感を失っていたことを自覚し、ショックを受けていた。震災後流れつづけた被災の映像は、カメラが被害の断片を採集し、編集でさらに人目を引く部分が選ばれ、本来は地続きでない場所同士がつながれて、実際とは異なる距離感や地理感覚を、私を含めて、視聴者は取り込んできたように思う」
「人間とは怖いもので、というか、鈍感なもので、こうした景色にも次第に慣れていくのが自分でもわかった。恐怖を追体験することに神経がもたないせいだろうか、飽きに似た感覚が、脳を支配し始める」
「一般の視聴者は、テレビや新聞で取り上げられた人は、いわば代表であり、象徴的存在であると感じる。そこに錯覚が生じる」「映らないのは、いないのではない、出たくなかったのだ、というわきまえを、我々一人一人が持つことが大切だ」
「いま願うことは、立ち止まり、振り返る勇気がほしいということ。声もなく、うずくまったままの人がきっといる。道を戻り、その人が歩きだせるまで、妙な励ましなどせず、静かに待てる強さがほしい。同じ歩幅で歩ける真の体力がほしい」「一つ一つのいのちの相貌を拾い上げられる本物の想像力がほしい」
by rurou-no | 2012-11-04 13:49 | 言葉・本

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