一所不住



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ケセラセラ

スペイン語で「なるようになる」という意味の「ケセラセラ」。
アルフレッド・ヒッチコック監督「知りすぎていた男」でドリス・デイが歌った。

何事もなんとかなる。なるようになるのだとのんびり構える性質だ。
能天気と言われれば見も蓋もないが。

「人間万事塞翁が馬」人間の幸、不幸は後から振り返って初めて分かるもの。
その只中にいても果たして良いことなのか、悪いことなのか、客観的には判断がつきかねる。都合のいいように思い込むしかないのだ。
いや、少し違う。ここで言いたいのはそうではなく、周りの者から見て幸せそうに見えようが不幸に見えようが、当人の思いとは全く関係ないことの方が多いということだ。現に我が家は世間的には超貧乏で気の毒な家庭と見られても仕方のない経済状態だが、私も連れ合いもお金には無頓着なところがあって「まぁ、なんとかなるやろ」とあせりはない。
流れに身を任せていればなんとかなるもので、結果が良かろうが悪かろうがそれはその時そう思うだけで、長い目で見ればどうか分からない。

「人間みなちょぼちょぼや」と小田実がよく言っていた。

これまで散々いい思いをしてきたが、もしかしたら今が一番幸せな時かも知れないと思える限り、これでいい。
「なんくるないさぁ」
by rurou-no | 2010-03-30 14:17 | 言葉・本

寄合酒

かつて今ごろは満開の桜の下で花見酒の宴をにぎやかに繰り広げる光景を見ることが多かった。今でもやっているのかも知れないが、田舎ではそうした習慣がないため目にすることはない。
もっとも下戸なうえに花の下で騒ぐなどという趣味もなく、桜はソメイヨシノよりヤマザクラ(オオシマザクラ)の方を好み、周りで「桜、桜」と盛り上がるほど冷めてしまうへそ曲がりな性格ゆえ、あまり花見酒には興味が湧かない。
それにしても今年の花冷えは度が過ぎる。いつまでも冬が居座って貧乏人にはつらい日々だ。
この島は亜熱帯の島ではなかったのか。
景気が寒く、懐中が寒く、気温までだらだらと寒い日ばかりだと遣り切れない。
ますます引きこもり状態に陥ってしまいそうだ。

上方落語の「寄合酒」は、小さい頃の遊び友だちが珍しくみんな揃ったから一杯呑もうという話がまとまり、趣向で一品ずつ持ち寄って「あいつがこんなもん持って来よったで」とそれを肴に呑むことになったところから噺が始まる。
穴の開いた一升徳利を持って酒をちょろまかしてくる奴、犬が咥えていたタイを横取りしてくる奴、鰹節屋の子どもを騙して鰹節を手に入れる奴など、アホな連中がいろんなものを持ち寄り料理に取り掛かる。火種なしに火を熾そうとする者、ヤマイモの漬け物やらカズノコの焼き物やら変なものばかり。ダイコンやキュウリまで焼いてしまう始末。せっかくのタイは犬に喰わしてしまう。極め付きは出し殻を出してきて、だし汁はみんなで手を洗い、ふんどしを洗って痔の尻を浸けて温めているという。
ばかばかしくて面白い。
枝雀さんで聞くと心底笑える。
by rurou-no | 2010-03-29 14:17

現し世

「うつしよ」は文字通り現世のこと。
米澤穂信「ボトルネック」は不在の青春小説だ。
自分が生きてきた世の中に自分が生まれていなかったとしたら、どうなっていたのか。
もし、自分が生きているはずの町に自分だけがいなくて他はそのままだったとしたら。
家族や友だちの中で自分の不在がそのまま受け入れられていたらどうなる。
自分は知っているつもりでも、周りの者は誰一人として自分のことを知らなかったら。
金沢が舞台になっていて、主人公の高校生が自分ではなく姉が生まれた町へワープしてしまう。
 「この世界の誰一人としてぼくのことを知らないということを、いまは少しつらいように思う。」
状況に納得できないまま夜の街へ帰っていく。
  「光のあふれる香林坊を通り抜け、早くも酔客が見られる片町も歩き過ぎ、犀川にかかる威圧的な鉄橋のたもとまで来た。繁華街からそれほど離れているわけではないのに、ここまで来ると街はしっとりと薄暗い。」
前に、こんなことがあったなぁと35年前の我が身を思い出した。誰にも告げず出奔し、金沢へ辿り着いた。まだ10代だった。初めての町で香林坊から片町を通って犀川の畔へ出た。小説の主人公と同じように犀川に沿って歩き、室生犀星の碑の前へ。
             ふるさとは遠きにありて思ふもの
             そして悲しくうたふもの
             よしや
             うらぶれて異土の乞食となるとても
             帰るところにあるまじや

もう、元に戻れない。新しく始めるしかない。まさかまた古里へ帰ることになろうとは思いもよらなかった。まだネットカフェなどなかった時代、オールナイトの映画館で一夜を過ごした。
あのころの孤独感や不安感に比べ、今は随分と図太くなった。明日からどうやって生きていこうという切迫した状態はたいして変わらないはずなのに。
by rurou-no | 2010-03-27 16:10 | 言葉・本

涙そうそう

       古いアルバムめくり
       ありがとうってつぶやいた
       いつもいつも胸の中
       励ましてくれる人よ
       晴れ渡る日も 雨の日も
       浮かぶあの笑顔
       想い出遠くあせても
       おもかげ 探して
       よみがえる日は 涙そうそう

                    作詞 森山良子

沖縄の言葉(ウチナーグチ)で「涙ぼろぼろ」という状態を「なだそうそう」と言うらしい。
遊びやら仕事やらで何度も沖縄へ行って、沖縄が大好きになった一人である。
特に音楽や踊り、風俗など沖縄の文化に惹かれている。そして言葉。独特の言い回しやイントネーションに、なんともいえない親しみを感じてしまう。
沖縄へ住むことを真剣に考えていた時期もあった。故郷を飛び出して何年も経っていないという頃にだ。
今はその沖縄に似ていると友だちから言われた故郷の島へUターンした。
やっと手に入れた南の島での生活も、収入を得る手段が少ない現実が前に立ちはだかる。
せっかくの定職を手放すバカな奴は始末に終えない。これから、いったいどうするつもりなのか。

このたび退職の挨拶回りをしていて、つくづく人との出会いを考えさせられた。
お世話になった取材先や記者仲間など、何処へ行っても温かい言葉をかけてくれる。
単に仕事上の関係に留まらず、人として付き合えたと実感を得られ、うれしかった。
「涙そうそう」とまではいかないまでも、心に「じん」とくる。
by rurou-no | 2010-03-26 12:59 | 音楽

時分の華

2年半ぶりになる。
地方紙の記者を始め、毎日パソコンに向かうのが仕事になったため家に帰ってまでパソコンを開く気分にはとてもなれなかった。もっともそんな時間をとる余裕もなかった。
一身上の都合、諸般の事情、早い話が社長とうまくいかなかったのが原因で3月限りで辞めることになって、現在は有給休暇の消化期間中。といっても引継ぎなどで、ときどきは出社する。昨日も交代で入る若手記者君を議会へ送り迎えのアッシー君2往復務めてきた。明日は他社の記者仲間へ彼を紹介し退職の挨拶をする。

2週間ほど前に出稿済みの、記者として最後になるコラム(27日に掲載予定)で引用した「花に嵐のたとえもあるぞ/さよならだけが人生だ」が、今日の朝日新聞に早野透さんも引用していたので困った。書き手として読者に真似をしたと思われるのがつらいところ。これまでにも何度か似たようなことがあったが偶然だからと諦めるしかない。読者数が圧倒的に違うから、もともと相手にならない存在だしね。

さて、久しぶりのブログ。しりとりでタイトルを決めて内容を考え、1年間にわたり思いつくまま綴ってきた形に習って今回も「じ」から始めようと「時分の華」。
能楽師、世阿弥については以前にも触れたことがあった。
そのままで美しい花。誰しも若いころは、そのままで輝いている。周りからちやほやされることで自分の実力を過信してしまい、「真の華」を咲かせられないで人生を終える人が少なくない。
自身を振り返ってどうだろう?いつか「まことの花」をと思いながら、気がつくと頭は禿げ上がり髭には白いものが混じるようになってしまった。花はまだ咲いていない。
いつか、いつか、といつまでもやってこない「いつか」をこのまま思い続けるのか。
まあ、いいか。多分、死を迎える瞬間に花は開くのだ。「ああ、いい人生だった」と。
by rurou-no | 2010-03-25 14:49

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