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一所不住



2015年 12月 31日 ( 1 )


ヒツジサルにて年越し

大晦日。「ヒツジサル」は「未」と「申」で十二支。十干と合わせて「乙未(きのとひつじ)」「丙申(ひのえさる)」になる。古文書では、日付に「寛政三辛亥年五月六日」などと、十干十二支入りで表記されている場合が多い。

さて、年末恒例の(といっても去年やっただけ)読書で振り返る1年。
今年はとうとう本屋へ足を踏み入れることもなく、つまり一冊も本を買うことなく過ぎてしまった。
読む本といえば、連れ合いが図書館で借りてくる本と、時おり購入する本、そして本棚に並んでいる本の再読、に限られる。
それでも、活字が詰め込まれた紙の重なりは、渇いた喉を潤してくれる美味なる水だった。

1年前に倣って月別ベスト本を挙げるつもりだったが、収穫のなかった月も出てきたので、面白かった本を任意に選んでみようと思う。
1月・又吉直樹 『火花』 文芸誌『文学界』で読む。芸人世界を普遍的なテーマと真摯な筆致で。
   西加奈子 『さくら』 『サラバ!』を世に出した作家は、初期から興味深い作品を書いてた。
2月・黒川博行 『後妻業』 ほぼ同じ内容の後妻業事件が明るみに。事実も小説も奇なり。
   津島佑子 『黄金の夢の歌』 記憶の底にある歌を求めて中央アジアを旅する壮大な物語。
   後藤正治 『清冽 詩人茨木のり子の肖像』 詩人の人物像が清々しく鮮明に立ち現われる。
   池澤夏樹 『池澤夏樹の旅地図』 移動の旅と思索の旅。好奇心と知性が世界を魅力的に。

3月・多和田葉子 『献灯使』 ベルリン在住の著者が描く近未来は、現実にある一面を捉える。
   沢木耕太郎 『世界は”使われなかった人生”で溢れてる』 もう一つの人生はどうだったか。
4月・なし
5月・日本文学全集『中上健次』 唯一無二の作家として中上健次の大きさを再認識した。
   岩瀬成子 『きみは知らないほうがいい』 もっと読まれていい児童文学作家である。
6月・中島京子 『かたづの!』 江戸時代の女大名が戦を避けて領民のために孤軍奮闘する。

7月・柴崎友香 『パノララ』 パノラマ写真に生じる空間の歪み、ズレているのはどっちなんや?
   米澤穂信 『リカーシブル』 ミステリーはあまり読まないのに、この作家はよく読んでいる。
8月・原田マハ 『モダン』 『楽園のカンヴァス』と対をなすような短編集。MoMAが舞台に。
   吉田修一 『森は知っている』 産業スパイ小説。指令に翻弄される少年たちが切ない。
   宮本輝 『田園発港行き自転車』 富山の田園風景の中を自転車で走る爽快感が秀逸。
9月・宮本輝 『水のかたち』 骨董屋で手に入れた手文庫の中にあった壮絶な引き揚げの手記。

10月・乃南アサ 『水曜日の凱歌』 戦中戦後の「女子挺身隊」は国家プロジェクトだった。
11月・内田洋子 『ミラノの太陽、シチリアの月』 珠玉の短編集として読んだ秀麗で上質な随筆。
    津村記久子 『この世にたやすい仕事はない』 ありそうでない真面目仕事小説が笑える。
    長野まゆみ 『冥土あり』 昭和の時代を背景に実直な職人だった亡父の生涯を辿って。
12月・宮下奈都 『羊と鋼の森』 調律師を主人公とした深遠なる音楽の森への誘い。音楽愛。
    森博嗣 『喜嶋先生の静かな世界』 大学院生と研究者の好ましく羨ましい師弟関係。
    
今年最後に読んだのは、梨木香歩 『海うそ』 。豊穣なる物語にどっぷりはまってしまった。
昭和のはじめ、かつて修験道の霊場と大寺院群があった南九州にある離島を調査する地理学者。平家落人伝説があり、明治の廃仏毀釈で打ち壊された痕跡を山の中に見る。
50年後再び訪れた島には橋が架かり、観光地へ作り変えられていく風景を目の当たりにした。
そこで、「喪失とは、私のなかに降り積もる時間が、増えていくことなのだった」との思いに至る。

離島で生まれ育った不肖ジジイには、あまりにも身近な森の中の道行きだった。土や植物、花、木、鳥、獣、小動物、木々の間から差し込む光、獣道を抜けた先に広がる風景、海うそ。
森の匂いまでリアルに嗅ぎ分けられるほど、物語世界を同伴者として一緒に歩いた。
島の生活、民話、民間信仰、風習、地名、ことば等々、民俗誌小説の傑作に出会った充足感に浸っている。
by rurou-no | 2015-12-31 11:58 | 言葉・本

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