「浮雲」 は
成瀬巳喜男 監督、
「浮き雲」(1996年) は
アキ・カウリスマキ 監督作品。
北欧フィンランドが生んだ映画監督アキ・カウリスマキ(1957年生まれ)は、映画ファンの間で
話題の的となっている。アキ・カウリスマキを見た?というのが挨拶代わりだ。
寒い国の人は概ね無口である。北欧ともなれば尚更だ。顔も強張ってしまう。
カウリスマキ作品に出てくる人は、無口で無表情な人が多い。それなのに表現が豊かである。
映画的表現が豊か、と言った方がいいかも知れない。無声映画を見ているかのような錯覚に
おちいるほど、言葉以上に映像が語っている。(実際にサイレント映画も撮っている)
人生が巧く行っていない人が主人公になる設定が多いのも特徴である。華やかさが微塵もない
みすぼらしい女や、情けないほどさえない男が、ヒロインでありヒーローなのだ。
カティ・オウティネン と
マッティ・ペロンパー が、カウリスマキ映画の顔となっている。
「浮き雲」は、2人とも失業してしまった夫婦のお話である。導入部で何の会話もなく2人の信頼
関係を描いていたのが見事だった。起死回生の一発を当てようとバクチに手を出すが、クジ運のない亭主が勝てるはずがない。スッカラカンとなって2人で寄り添いながら帰っていく。
カウリスマキ映画は絶望的で救いようがないみたいだが、実は逆で、ダメ女ダメ男ぶりが笑えて
くるのだ。彼らも常に前向きで希望を失わない。見終わったあとの痛快感がたまらなく愛しい。
「マッチ工場の少女」(1990)
「愛しのタチアナ」(1994) 悲惨な喜劇と寡黙な恋愛。
「レニングラード・カウボーイズ・ゴー・アメリカ」 「レニングラード・カウボーイズ、モーゼに
会う」 の2本は出色である。その大真面目さに腹をかかえて笑ってしまった。
カウリスマキは映画評論から、映画監督の兄に誘われて映画界入りしたそうだ。彼は映画が
大好きな映画マニアだと思う。映画のツボを心得ていて、その仕掛けが絶妙なのだ。