オスカー・シュレンマー は、1880年ドイツ・シュトゥットガルトに生まれる。
画家・彫刻家・舞台美術家として紹介されているが、彼の名前を後世に残したのは(私が知ることになったのは)
バウハウスでの業績であろう。
前述したように
カンディンスキーも教鞭をとっていたバウハウスで、シュレンマーは金属工芸を教えていたそうだ。この学校にあった《舞台公房》においての彼の仕事は、画期的なこととして注目に値するものであった。キーワードになるのは 「3」 。
『トリアディック・バレエ』 この作品を16ミリフィルムで見たのは、かれこれ30年近く前になろうか。その斬新な発想に対して驚きというよりも、喜びの感情の方が強かった。1922年初演というのに、半世紀以上経っても色褪せないダンス表現が嬉しかった。
蛇足になるが、ナチスによって「頽廃芸術」の烙印を押された名誉ある芸術なのだ。
彼は物事を構成する三つの要素に徹底してこだわった。
〈形態・色彩・空間〉〈舞踊・衣裳・音楽〉〈円・三角・四角〉〈赤・青・黄〉〈滑稽・荘厳・幻想〉等々。
作品は3つのパートに別れ、12通りのダンスを18種類の衣裳で踊る。
球体や三角形・四角形の幾何学的な形の奇妙な衣裳を着けたダンサーたちが、ロボットのような動きで踊っていた。コスチュームに制約されて動きがままならない様で面白かった。TVのCMでも使われていたらしいが見ていない。
二つの大戦に挟まれた時期、ヨーロッパの国々では前衛的・実験的な芸術運動が盛んに行なわれた。このトリアディック・バレエもその一つであった。その洗練されたアヴァンギャルド表現は、現代でも充分に新鮮なものである。誰か、再現舞台をやってくれないものか。