星野道夫さんが
「カリブー」 なら、
岩合光昭さんは
「ヌー」 であろうと勝手に思っている。
動物写真家としてそれぞれ素晴らしい仕事をして、私たちに未知の自然や動物の生態を知る機会を与えてくれた。一枚の写真が、新しい世界への窓となっているのである。
そして、特にこの2人に注目する取っ掛かりとなったのが、「カリブー」であり「ヌー」であった。
「ヌー」はアフリカ大陸南部、タンザニアの
セレンゲティ やケニアの
マサイマラ に生息する野生の牛である。草食動物であり、食料となる草を求めて集団で大移動することで知られる。
その規模は半端でなく、数十万頭から百数十万頭の集団というからすごい。
移動距離も3000キロに及び、一年の大半は移動に費やしている。
岩合光昭はこの大移動の写真を撮る為に、夫人の日出子さんと5歳になる娘の薫ちゃんと家族3人で、セレンゲティに滞在した。
この時の記録は、岩合日出子著
「アフリカポレポレ」 に詳しい。
ケニアへ行く飛行機の中でこの本を読んだ。初めてのアフリカへの旅で高揚していた気分が極めて日常的な生活者の視点で書かれた本のおがげで、未知の地への距離が近づいた。
帰りの飛行機の中でも読み返していて、そのまま忘れてきてしまったのが残念だ。何度でも繰り返し読みたい本だったのに。誰かがそれを手にして、そうしてくれていればいいのだが。
ヌーの集団を率いているのはシマウマだ、という面白い説がある。こんな突飛な発想が好きだ。
あまり視力の良くないらしいヌーは、警戒心の強いシマウマと行動を共にすることで外敵からの危険を回避し、シマウマもヌーの集団に守られるという持ちつ持たれつの関係なのだと思う。
〈午年の牛飼い少年〉としてはその親密さは、ほくそ笑みながら納得してしまう。