〈親不知子不知〉は、北アルプスの北端がそのまま日本海へと落ち込んだ断崖絶壁で、荒波が打ち寄せる、北陸道最大の難所として知られていた。
現在は道路事情も良くなりスムーズに通行できるが、昔はいつ通行止めになるか運次第なところがあり、波に洗われそうになりながら通った記憶がある。
〈筒石〉は北陸本線の糸魚川と直江津の間、頸城トンネルの中にある駅として有名だ。そして、
「越後つついし親不知」 の舞台となる〈歌合〉は、親不知から歌川沿いに5キロほど山へ入った雪深い小さな寒村であるという。
水上勉 原作
今井正 監督
佐久間良子 主演 1964年作品。
越後杜氏である夫が出稼ぎの留守中に、その仕事仲間に手ごめにされ身ごもってしまう。夫は妻の不貞を疑い、遂には自ら手にかけて殺してしまう。佐久間良子の美しさが、絶頂期にあったころの映画である。雪に埋もれながら見せる恍惚の表情は、雪の精が乗り移ったかと思わせるほど甘美な魅力を発していた。
共演は、
三国連太郎 と
小沢昭一。芸達者の2人、役柄は説明するまでもないだろう。
今井正監督は、伝説となった
「また逢う日まで」 「青い山脈」 などを撮っていて、巨匠とされているが、
「橋のない川」(原作
住井すゑ) の監督という印象しかない。
水上勉の小説も、映画化されることが多い。監督によって作風の違いが顕著であり面白い。同じく、佐久間良子がヒロインの
「五番町夕霧楼」 田坂具隆監督。他には、
「越前竹人形」 吉村公三郎監督 若尾文子主演、
「雁の寺」 川島雄三監督 若尾文子主演、
「飢餓海峡」 内田吐夢監督 三国連太郎主演、
「はなれ瞽女おりん」 篠田正浩監督 岩下志麻主演 など。