ダンサーの中のダンサー、至高のバイラオーレ、
クリスティーナ・オヨス こそは私にとってはその名を聞くだけで体が熱くなる魅惑の存在、最高のフラメンコ・ダンサーである。
彼女を初めて目にしたのは、1981年 映画
「血の婚礼」 でだった。
フェデリコ・ガルシア・ロルカ 原作
カルロス・サウラ 監督
アントニオ・ガデス 振付 クリスティーナ・オヨスが踊り始めた瞬間、ノックアウトされてしまった。
1986年 アントニオ・ガデス舞踊団の一員として来日公演。
「カルメン」1983年の映画「カルメン」では、脇役のベテランダンサーを演じていたクリスティーナ・オヨスが、舞台ではもちろん主役のカルメン役。彼女以上のダンサーはいないのだから当然のこと。
その一挙手一投足の仔細な動きすらも見逃すまいと、必死で目に焼き付けた。オーラが凄い。
恍惚の表情、ありったけの感情を官能に集約して身体からほとばしり出すかの動き。緻密さとダイナミックさが交互に繰り出され、一瞬の隙も与えない。
カンテ(歌)とギターラ(ギター)が、ダンスに負けまいと見事な演奏で競演する。
もともとフラメンコの音楽を聞いただけで、血が騒ぐほうだった。
グラナダのサクロモンテの丘に登り、ロマ(ジプシー)がかつて暮らしていただろう洞窟を探して廻った。そこにはもはやフラメンコはなく、旧市街のタブラオでやっとフラメンコに出会った。
1996年に乳がんであることを宣告されたクリスティーナ・オヨスは、生まれ故郷のセビージャへ戻り、アンダルシア・フラメンコ・バレエ団の芸術監督として、後進を指導する傍ら自らも舞台に立ち、フラメンコの第一人者ならではの追随を許さぬ気概をみせている。
また舞踊学校、公演ステージを備えた〔フラメンコ舞踊ミュージアム〕の設立にも力を注いだ。