「こがいに暑いと年寄りにはこたえるなぁ」と、年寄り同士のやりとり。頭がボーっとしているせいか、毎日繰り返している作業の手順をうっかり間違えることが増えてきた。お互い様で、って許し合えるのが、同年齢のいいところ。一級品の貧乏所帯は、気持ちの方に豊かさ求めるしかないので、せいぜい労わり合いながらやっていきたい。
さて、わが家のパソコンは、主に連れ合いが情報収集に使うことが多い。
禿頭爺はあまりインターネットとは懇意でない(モニターの文字を読むのが苦手)。
先日も「ふべんえきってあるの見つけたんやけど、おもしろいで」と教えてくれた。
ん?ふべんえき?頭の中で変換キーをタッチして「不便駅」という文字が浮かんだ。不便な駅を探索する愛好者グループ?酔狂な人もいるもんや。
秘境駅と似たようなもんやろ、と勝手に解釈した。ローカル線で各駅停車しか止まらない。辺境の地にあり時間がかかる。人里からも遠く離れてぽつんと駅だけがある。なんやかやイメージが湧いてきた。うん、不便な駅とはええやないか。
連れ合いは「わたしらふだんからしてることやね」「研究所もあるねんて」。んん?話が噛み合わないのは、年寄り同士ならよくあること。不便な駅の研究とは、はて如何なるものぞ?とパソコンを開いて「ふべんえき」と入力したら、「不便益」「不便益システム研究所」というのが出てきた。不便で良かったことを研究しているそうな。
なるほど、益になるかならないかはともかく、不便を楽しむというか不便を好ましく思っているのは事実である。同じ結果になるなら、手間と時間をかけた方がいい。過程にこそ面白さがあると考える。便利を疑え!と声を大にしたい。
不便益に該当するかどうか、エアコンも扇風機も使わず、ちょっとした風の流れの中に涼を感じるようになったのが表題十七文字だ。じっとしてても汗が滴り落ちるのは避けられないけど、風のない日に空気が動くのを見つける悦びには代えられない。