夏が戻った暑苦しい日に、古い言葉で恐縮する。「累卵の危うき」とは、卵を積み重ねたように不安定で危うい状態にあることのたとえだ。
異常気象が常態となってきている地球環境は、まさに累卵の危うき状態であるといえる。
その地球に暮らす人間はといえば、争いをやめられず殺戮と破壊を繰り返すバカばかりで救いようがない。そして私たちを治める国もまた、きわめて危険な状態にあると率直に思う。
大本営発表を垂れ流す御用マスコミによって、国民は騙され意識操作されていることに早く気付くべきだ。何事によらず負の部分は覆い隠され、真実は伝えられていない。
不条理で無慈悲な社会と、それを構成するシステムにがんじがらめにされて、身動きが取れずなすすべもないありさまを想像してほしい。その姿はだれもが当事者として映るはずだ。
一昨日この町でも自主上映された、三上智恵監督の映画『標的の村』を見た。
新型輸送機「オスプレイ」のヘリパッド(着陸帯)建設に反対し、座り込みの抗議をした住民が「通行妨害」で国から訴えられた。沖縄北部にある東村高江は、村を囲む森が米軍の演習場となっており、武器を持った兵士が道をうろつき低空飛行のヘリが飛び回る光景は日常となっている。そこへオスプレイがやってくるという。これ以上生活が脅かされてはたまらんと立ち上がった住民の闘いを追った良質のドキュメンタリーだった。
2012年9月29日オスプレイ強行配備前夜、沖縄の人びとは米軍普天間基地ゲート前に車を並べ、座り込んで22時間にわたって完全封鎖した。台風17号の暴風が吹き荒れる最中の闘いであった。米兵が見ている前で、沖縄県警の警察官が沖縄県民を強制排除していく。地元の記者やカメラマンらさえも容赦ない。映像を見ながら怒りでからだがふるえて止まらなかった。
本土メディアはこうしたことを一切伝えない。沖縄の人びとはなぜそこまでするのか、考えない。「いつものように抗議行動がありました」の短いコメントが、そこで起きた出来事さえなかったことにしてしまう。どこかの国みたいに自由な表現と報道すらも封殺されてしまうこの国は、もはや危険域に入った。目出度く「普通の国」の仲間入りである。
世間では「同調圧力」という魔物がはびこっている。累卵が崩れる日はいつになるのか。