これは友人某君から聞いた話である。
彼の自宅向かいに住む、専業主婦Aさんが2月下旬ごろから姿を見せないらしい。
Aさんの愛車も同じく見かけないので、どこかへドライブにでも行ったのだろうと、初めのうちは気にも留めなかった。ところが、1週間経ち、2週間が経っても帰ってこない。とうとう、いなくなってから1ヶ月以上になったそうだ。
何があったのか?何かが起こっているのではないか?疑問は膨らむばかり。
真相を突き止めようと某君は、私立探偵のナンタン・ホームズ氏に調査を依頼した。
早速駆けつけたホームズ氏は、近隣への聞き込みを行った結果、いくつかの仮説を立てた。
証言①・・・主婦Aさんの夫B氏は、毎日早朝に仕事へ出て深夜に帰宅するという生活パターンは、Aさん行方不明後も変わらない。ただB氏の車が駐車場にあるのを未明に確認するだけで、本人の姿は誰も見ていないという。
証言②・・・Aさんが行方不明になる前、深夜帰宅したB氏が大声で何かを言っているのを、近所のCさんが何度も聞いている。
仮説Ⅰ・・・B氏に愛想をつかしたAさんが、実家へ帰ってしまった。
証言③・・・休みの日に一緒にいるところを見たD氏によると、夫婦仲は良さそうだったという。D氏はさらに、他所へ行っている子どもがしょっちゅう帰ってきて、家から一歩も出ないくらい親子関係が濃密であったと証言した。
仮説Ⅱ・・・証言③から子どものところへ行っていると推測される。ただ、夫婦仲は悪くないのにAさんだけ子どものところへ行きっぱなしというのは不自然である。
仮説Ⅲ・・・留守宅にはAさんの〇〇、とホームズ氏は右側の頬だけでニヤリと笑った。
果たして事件性はあるのか、専業主婦失踪事案は混迷を帯びてきた。迷探偵ナンタン・ホームズ氏の薄ら笑いとともに動きは慌ただしくなってきている。真相は如何に。いったい何が?