一所不住



ジオンゴ

「ジオンゴって呼んでええか?」
ケニアのナイロビにある国立劇場のテクニカル・ディレクター(というより「親方」「棟梁」と呼びたい雰囲気があった)から声をかけられたのは、自己紹介が済んだすぐあとだった。

仕事でアフリカまで出かけたはいいが、通訳が同行していないため片言のつたない英語で現場を仕切らなければならない不安でいっぱいだったとき、親方の人懐っこい笑顔に救われた。

小生の名前は発音しにくいから、発音しやすい似た名前で呼びたいという。どうやら日本語では似てないけどキクユ語では似ているらしい。アフリカっぽくてええなぁ、と即答で「ええよ。マイネーム イズ ジオンゴや」。その日は何度も「ジオンゴ」と呼びかけられて気分が良かった。

親方は「ジオンゴはなぁ、ケニアの有名な作家の名前やで」(関西弁でなく英語でだが)と教えてくれた。「アフリカを代表する偉大な作家や」「凄い小説を書くんやでぇ」と誇らしげな表情で語っていたのを覚えている。

ウィキペディアには<グギ・ワ・ジオンゴ(1938年1月5日~)は、ケニアの作家。当初は植民言語である英語を使用していたが決別し、現在は母語であるキクユ語を用いる。小説に始まり、戯曲、児童文学、映画、論文、批評まで幅広く手掛ける>とある。真のアフリカ文学はアフリカ諸民族言語で書かれるべきとの信念からキクユ語作家となったとか。「闘う反体制作家」との評価があるとも。

光栄なニックネームをいただいたものだ。ともすれば無愛想でとっつきにくい印象を与えるせいか、あだ名で呼ばれることはあまりなかった。期間限定、地域限定ではあったが、この「ジオンゴ」は自分でも気に入っている。

田舎に引っ込んでから活動範囲は狭くなり、新しく出会う人も少なくなった。これから先、あだ名で呼ばれるようなことは多分ないかもしれないし、ましてや彼の地へ行って「ジオンゴ」と呼ばれることは、もうないだろう。
せめて何かの符牒・記号的なもので使えないか、と密かに企んでいる。
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by rurou-no | 2012-04-28 13:44
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