隠遁生活をしているつもりでも、やたらと目に入ってくる言葉がある。
「スマート」って、子どものころに体型を表す言い方として覚えたカタカナ語だった。
そのうち恰好いいとか洗練されたという意味が含まれるようになった。そうなると体型に対して使うのはダサい(この言葉も古い)のか、あまり聞かなくなった。
車好きには、ドイツの小型車ブランド「スマート」に馴染みが深い。
そういえば「スマートボール」というのもあったな。
ベトナム戦争で米軍が使用した、レーザー誘導爆弾ウォールアイは「スマート爆弾」と呼ばれた。
破壊と殺戮を目的とした兵器が「スマート」とは、そのセンスに戦慄を覚える。
目標へ誘導することにより人的被害を最小にすると喧伝されているが、記憶に新しいイラク戦争で一般市民がどれだけ犠牲になったか考えれば、その詭弁と戦争の本質が明らかだ。愚行はアフガニスタンでも繰り返されている。
オバマ大統領の下で国務長官となったヒラリー・クリントンは、対外戦略として軍事力、経済力のハード・パワーと文化や技術のソフト・パワーを統合させた「スマート・パワー」を掲げた。新しいアメリカを予感させる言葉だった。
地球温暖化対策として今、「スマート・グリッド」が求められている。電力の需給バランスを効率よく最適化する電力供給システムである。将来的には太陽光や風力など新エネルギーを、既存の火力や水力発電が補完する形になるのではないかと思う。
「スマート」の意味が「賢明」になってきた。
フェイバリット英和辞典によると①《主に米》利口な、賢い、抜け目のない、生意気な②《主に英》(人・服装が)しゃれた、きちんとした、流行の③(動作などが)活発な、素早い、強烈な とある。
そして携帯情報端末は多機能型携帯電話「スマート・フォン」の時代になった。
ここまでくると隠遁者は取り残され置き去りにされて、望み通りの隠遁状態だ。