むずかしいことをやさしく
やさしいことをふかく
ふかいことをゆかいに
ゆかいなことをまじめに
今月9日に亡くなった作家で劇作家の井上ひさしさんの座右の銘だったという。
極めて示唆に富んだ言葉として忘れることなく大事にしたいと思っている。
文章を書いて口を糊する業界では、地方紙の記者といえば端っこの末端に位置していると認識しているが、書くときの心構えは変わらない。
新聞記事は中学生でも理解できる内容に、と常々自らに言い聞かせながら何度も読み返し噛み砕いて分かりやすく書いてきたつもりだ。
「難しいことをやさしく、やさいいことを深く」書くためには、まず自身がそのことを充分に理解していなければならない。生半可な知識ではとうてい分かりやすい表現なんてできっこない。
半可通に陥らないよう、日頃から深い探究心を怠らないことが大切である。
「深いことを愉快に」書く作業はさらに上級編であり、練達への道ははるかに遠い。
もっとも記者稼業は早々に引き揚げてしまって、何の説得力もないが。
文章の達人として井上ひさしの名は大きな存在だった。
テレビ人形劇「ひょっこりひょうたん島」の洗礼を受け、「父と暮らせば」まで小説や舞台、映画など数多くの仕事を目の当たりにしてきた。
彼の偉業は誰もが認めるところであり、その作品はいつまでも生き続ける。