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一所不住



かにかくに

          かにかくに渋民村は恋しかり
            おもいでの山おもいでの川

          石をもて追はるるごとくふるさとを
            出でしかなしみ消ゆる時なし

          ふるさとの訛りなつかし停車場の
            人ごみの中にそを聴きにゆく


今年の初投稿は「か」から始まる、石川啄木の歌となった。
年末は山頭火の俳句で終わり、正月は短歌からというのもいいではないか、とあまり関係ないのに、今思いついたいささか強引なこじつけである。

ともあれ、連れ合いが出かけて留守番の夜、久しぶりに書いてみようとブログを開いて、たまたま「か」で頭に浮かんだのが「かにかくに」だった。

啄木は「石もて追わるるごとく」逃げ出したふるさと渋民村を「かにかくに 恋しかり」と歌い、上野駅までふるさとの訛りを聴きに行った。その心情は、いかばかりか。

一方で、室生犀星の詩には「ふるさとは遠きにありて思ふもの そして悲しくうたふもの よしや うらぶれて異土の乞食となるとても 帰るところにあるまじや ひとり都のゆふぐれに ふるさとおもひ涙ぐむ そのこころもて 遠きみやこにかへらばや 遠きみやこにかへらばや」とある。

田舎の中学生には「ふるさと」の概念すらよくわからないまま、言葉の美しさやリズムの良さに惹かれて繰り返し声に出して覚えた。

その「ふるさと」を離れ、30数年ぶりに「ふるさと」で暮らす今も「ふるさと」は曖昧なままだ。
ただ、距離や時間が離れるほど「ふるさと」への想いは強くなるという法則(連れ合いの理論)だけは、実感としてなんとなくわかるような気がする。
# by rurou-no | 2012-01-15 19:51 | 言葉・本

うしろすがたのしぐれてゆくか

山頭火である。
自由律俳句の代表的な俳人で、旅と酒をこよなく愛した種田山頭火。
俳句仲間の好意に甘えて酒をたかり、返す当てのない金を借りて旅の人となる、どうしようもない人である。

遠くから見ている分には面白い存在だが、身内にこんな人がいると困るだろうと想像する。
ましてや知らん顔をしててもいいのに、放っておけないばかりに世話を焼いてしまう友人となると「迷惑やけど愛すべき人やし」、という感じか。ついつい手を差し伸べてしまうのだろう。

ともあれ、その人が詠む句は味わいがあって大好きになってしまった。
前にもここで触れたと思うが、山頭火が歩いた旅程を追いかけるように辿ったことがあった。
「あぁ、ここで、あの句を詠んだのか」と悦に入ったりした事を覚えている。

(自嘲)《うしろすがたのしぐれてゆくか》 は約80年前のちょうど今ごろの時期だったはずだ。
場所は福岡県八女市といわれている。
時雨が降る中を歩いて行く我が身を、もうひとりの自分が見ている。自堕落で 《どうしようもない私が歩いている》 のだ。 どこまで行っても 《まっすぐな道でさみしい》 。

山頭火は曹洞宗の寺で出家得度したれっきとした僧である。
「托鉢修行」と句作、そして酒に溺れたの生涯だった。

年の暮れになって、山頭火の句にしみじみとしている。
今年は3月に東北大震災の大津波と原発事故があり、9月には台風12号が紀伊半島を襲い、山津波と川の氾濫が大きな被害をもたらした。

「一陽来復」 陰が極まって陽に返る。悪いことが続いたあとは、良い方向に状況が変わっていってほしい、と願う。
# by rurou-no | 2011-12-30 16:42 | 言葉・本

「怒り」と「鎮魂」の詩集

連れ合いのところへ、仙台市に住む知人からクリスマスギフトが届いた。
その中に「宮城石巻 復興チョコレート」と「追悼詩集 『沈黙の海』」が入っていた。
詩集は宮城県登米市在住の菊田郁さんという方が出されたもので、売り上げの半分を「みやぎ育英募金」に基金するそうだ。菊田さんは気仙沼、南三陸町志津川、石巻で勤務経験があるという。

「がれき」という詩は
ひとくちに/<がれき>と言ってしまえば/それだけのことかもしれない/だが<がれき>なんてひとつもない/どれもこれも/家族が長い時間をかけて/こつこつと積み上げてきた/思い出の詰まったものばかり/
ガラスのかけらひとつにも/泥水に浸かった人形にも/散乱している皿や箸やスプーンにも/夜見店で買った指輪にも/みんなみんな/たくさんの想いが込められている/
けんかもしたけど/笑いもあった/このテーブルでみんなで食事をした/こどもの誕生を喜び/老人の死を悲しんだ/折れ曲がり泥にまみれた柱は/もう何の役にもたたないが/それらのことをみんな見つめて/一緒に笑い一緒に泣いた/
<がれき>なんてひとつもない/ほんとうにひとつもない/みんな宝物ばかり


今日のタイトルに借りた「怒り」は
どこへいけというのか/何も持たず 着の身着のままで/どこへいけというのか/家を捨て 故郷を捨てて/どこへいけというのか/牛を捨て 馬を捨てて/どこへいけというのか/子猫を捨て 子犬を捨てて/どこへいけというのか/えさもやらずに/もう やせ細って死んでしまうじゃないか/どこへいけというのか/遊園地も公園も学校も使えない/どこへいけというのか/仕事を捨てて/どうやって生きていけというのか/
それでもなお/ゲンパツは安全だという/科学者の幻想/政財界の癒着/ゲンパツ推進の知事が/当選するという不思議/この無感覚と愚かさ/
いつ帰れるのだろう/ふるさとの村に/ふるさとの海に


「鎮魂譜ー石巻・大川小学校の子供たちへー」と題した詩
幼き子らよ/短かった小さき命よ
春には/たくさんの花となって/咲いておくれ
夏には/浴衣を着て/祭りにいこう
秋には/星になって/優しい光を届けておくれ
冬には/雪になって/悲しみを鎮めておくれ
幼き子らよ/失われたたくさんの命よ
もう一度/母の胸に/もう一度/父の肩車に/戻ってきておくれ 

# by rurou-no | 2011-12-12 11:09 | 言葉・本

牽強付会(けんきょうふかい)

<原発から飛び散った放射性物質は東電の所有物ではない。したがって東電は除染に責任をもたない。>
原発事故以来、営業ができなくなっている二本松市のゴルフ場が、東京電力に汚染の除去を求めて、東京地裁へ仮処分を申し立てたことに対する東電の主張である。

こういうのを「牽強付会」という。
道理に合わなくても自分の都合のいいように強引に理屈をこじつける。
10月31日、東京地裁は東電に除染を求めたゴルフ場の訴えを退けた。
驚くなかれ、裁判所は東電の無茶苦茶な主張を認めたのだ。

この国は、こんな無責任が正当性をもってまかり通るようになっているのか。
サンデルさんに「正義」とは何ぞや?と聞いてみたくなった。
このままでは、まともな議論は成り立たないぞ。

東電っていったい何様なんや。どう考えても、裁判所の判断は理解できない。
放射能という毒物を撒き散らかしても責任を問われないなんて、何でもやった者勝ち、やりたい放題やてか。

確かにいつの間にか「原子力マフィア」が復活してきた。政府は事故を小さく見せようと、国民を騙し続けているし、政財官よってたかって東電を守り原発を推進しようと躍起になっている。一方で被害者救済は先送りされて、なかなか進まない。

放射能汚染の実態も、本当のことは知らされないままだ。
小生は「除染」にも懐疑的である。最終処分場すら決まっていない段階で、洗い流したり表土を剥ぎ取ったりしてどうするつもりなのか。1兆円以上の予算が注ぎ込まれるという。

できれば莫大な税金は、子どもたち(これから子どもを産み育てる若者も含めて)を守るため避難を促し、新しい土地での生活再建を助ける費用に回してもらいたいと願う。
# by rurou-no | 2011-12-06 16:18

「串本を守る」会の呼びかけ

きのう高校の同級生から電話で誘いがあって出かけたところ、「串本を守る」会の呼びかけだった。
何から守るのか?もちろん「原発」からである。

配布された資料によると、原発を廃止すべき理由に①事故後これだけたっても終息のめどすら立たないものは、続けてはならない。今後現存の原発が事故を起こさないという保障はどこにもない。②廃棄物の処理が、人類の英知を結集して40年近くかかって手に入れられていない事実。片付けのできないことはやってはいけない。この2つで、廃止にするための理由は十分であるとしている。

まったくその通りだ。
次に、原発をなくすことができる力は。「いさぎよさ」であるという。
今の暮らしができなくなることが前提条件になる。そして好き嫌い関係なく寄り合う姿勢。さらに悪者を作らない、攻撃しないこと。

「原発はいらない」という思いや活動があっても、バラバラのままでは非力であるから共有できる課題を明らかにし、それぞれをひとつにまとめつなげていくことを呼びかけている。
ここまでは、ほとんど異存なく賛同できる。

ここから先、呼びかけ人は抽象的な言い方が増え、それまでの内容に馴染まない単語を使ったりと、分からなくなってきた。そこで出席者の女性から「参加者同士で話し合いたいから一人ひとり発言しよう」と提案があって、全員が考えを述べた。これはよかった。

さて、この小さな町で集まった私たちはいったい何ができるのか、どういうかたちでつながっていけるのか、やっと一歩を踏み出したところである。立場の違いはさておき、「原発をなくしたい」という共通の思いを実現させるために、手を取り合って動き出さなければならない。
声をかけてくれた同級生Hには「おおきによ」や。
# by rurou-no | 2011-12-03 15:23


一瞬を、永遠に

by rurou-no
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