一所不住



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無いもん買い

「おい、何してんねん?」「えっ?」「何してんねん?」「わい?わい、あのー、立ってんねん」「立ってんねんは見たらわかってるがな。立って何してんねん?ちゅうてんねん」「立って・・・立ってんねん」「んなおかしなものの言ぃ方すんねやあれへんがな、どや、おもろいことして遊ぼか?」

上方落語 『無いもん買い』 の入り、喜六と清八のやりとりは前にも引いたと思うが、「何してんねん?」と聞かれて「立ってんねん」「立って、立ってんねん」と、間の抜けた応え方がつぼにはまって、いきなり笑いの世界へ引き込まれてしまう。たしか桂坊枝さんで聞いた。

噺は 「おもろいことなぁ・・・わい、銭が無いがな」「銭があって遊ぶんやったら誰でも遊ぶがな、今日は銭なしで遊ぼか、ちゅうてんねん」 と続いて2人は「無いもん買い」に出かける。
金物屋で「鞘付きのノコギリ」「蓋付き、引き出し付きのカナダライ」、古着屋では「半袖半ズボンのモーニング」「裾模様のあるパッチ」「三角形の座布団」「綿入りの蚊帳」と、店にないもんばかり注文して亭主をなぶる清八、それを見て喜六が真似ようとするが失敗する、お馴染みのパターンで、ほかに饅頭屋や魚屋も冷やかしていく。

上方落語らしい、バカバカしさだけの噺である。
「ないものはない」宣言で全国的に注目を集めているのは、島根半島沖合い約60キロに浮かぶ離島、海士町だ。キーワードには2つの意味(①ないことを強調する②なんでもある)が含まれるが、つまり大事なものしかない(ないのはいらないもの)、と捉えていいだろう。

現町長がまず手を付けたのは自らの給与削減、次に役場職員の給与削減、これで2億円の財源を引き出したという(わが町では逆に町長が最初にやったのは自分の給与を上げることだった)。そこから、役場は「住民総合サービス会社」だとして、次々とアイデアを実行していく。海の幸の商品化や隠岐牛のブランド化、さらに統廃合寸前だった島の高校へ全国から生徒を呼んだ。 Iターン、Uターン住民が増えているそうだ。

わが町の議員先生方も数年前この町へ視察に行ったはずだが、なに見てきたんない?
国会と同じく町長派が大半の町議会では、町の活性化は望むべくもない。
衆院選を前に、失政を誤魔化すため嘘八百を並べ立てて饒舌になっている権力者はみっともないぞ。隠したいことがある者ほど饒舌になるのは人の習い。例のばーさんと一緒やで。
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by rurou-no | 2014-11-29 14:44

白く咲いたか百合の花

前回に続いて、啖呵売の一節をタイトルに借りた。
「白く咲いたか百合の花、四角四面は豆腐屋の娘、色は白いが水臭い・・・」
やはり、映画『男はつらいよ』で寅さんがやっていた。耳に心地良い七五調のリズム、テンポのよさが身上で、いろんなバリエーションがある。これを聞くのが一番の楽しみだった。

プライベートでは人と交わることがなく、物静かだったと伝えられる喜劇役者の渥美清。
一方、寡黙で不器用な男の美学を演じ続けたのが、10日に亡くなった「最後の映画スター」高倉健。映画のイメージとは裏腹に、人好き話好きで、ユーモアがあって気配り上手だったそうな。
偶像と実像のギャップといっても、偶像(=虚像)はこちらが勝手に思い込み願望を込めて作り上げたものだから、当の本人はなかなか複雑な心持ちであろうと思う。

ともあれ、御多分に洩れず迂生にも「健さん」はアイドルだった。ウツクシクテカッコヨカッタ。
始まりは、内田吐夢監督 『宮本武蔵』 の佐々木小次郎役だが、なんと言ってもその後の『網走番外地』シリーズ、『日本侠客伝』『昭和残侠伝』『緋牡丹博徒』等のシリーズは映画館へ通い詰め、ほとんどの作品を見たはずだ。当時「名画座」(低料金で3本立)という強い味方があったおかげである。

東映を離れ他社の大作に出るようになってからは熱心な追っかけでなくなったが、やはり「健さん」は憧れの男像としてアイドルの地位は揺るがなかった。身近に映画がある環境から遠くなった今、奇しくも2年前に見た 『あなたへ』 が遺作となってしまったのは残念である。惜しむらくは、ムショ帰りの老人役を演じる健さんを見たかった。

時代は移り映画のあり方が変わる中、もうこんな大スターは現れないだろう。残るは「最後の映画女優」吉永小百合。しかし彼女自身がプロデュースした映画 『ふしぎな岬の物語』 はここら辺では上映されなかった。原作は2回読み、どんな映像になるのか想像を巡らしながら首を長くして待っていたのに、このザマだ。別にアート系の映画をやってくれなんて、贅沢言っているわけやない。娯楽映画さえ見れないなんて、いったい映画館で何を上映しているんや、ったくぅ。
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by rurou-no | 2014-11-20 15:06

屋根屋のフンドシ

この1週間に 万城目学 『悟浄出立』、赤瀬川原平 『老人力』、深津十一 『「童石」をめぐる奇妙な物語』、村田喜代子 『屋根屋』(カバーがシャガールの「街の上で」) を読んだ。主体性のない読書でも2日に1冊のペースだ。そして今日のタイトルは最後の『屋根屋』からいただいた。そのままだとまた「や」にもどってしまうので、ふと思いついた香具師の啖呵売の口上を拝借。

啖呵売といえば、映画『男はつらいよ』の寅さんを思い出すのは50歳以上の年代になろうか。
リアルタイムで見られた若いころは敬遠していた映画だったが、中年を過ぎてから大阪・新世界にあった映画館で(「場末の映画館」という、映画ファンにとって哀愁が漂う形容がぴったりの小屋で、便所の小便臭が場内の空気に混じっていて、まともな椅子を探すのが座る前の儀式となっていた)、ほぼ全作品を見た。

「結構毛だらけ猫灰だらけ。見上げたもんだよ屋根屋のフンドシ。見下げたもんだよ底まで掘らせる井戸屋の後家さん。上がっちゃいけないお米の相場、下がっちゃこわいよ柳のお化け。馬には乗ってみろ人には添ってみろってね。物のたとえにもいうだろう。物の始まりが一なら国の始まりは大和の国。泥棒の先祖が石川五右衛門なら人殺しの第一号が熊坂長範。巨根(でかいの)の手本が道鏡なら覗きの先祖は出っ歯で知られた池田の亀さん出歯亀さん。 (中略) 四谷赤坂麹町、チャラチャラ流れるお茶の水、粋な姐ちゃん立ち小便、驚き桃の木山椒の木、ブリキに狸に蓄音機、・・・(後略)」  室町京之介 『香具師口上集』 より

『屋根屋』は、ごく普通の主婦が夢を操作できる屋根屋と一緒に夢の中で屋根を巡る夢旅行をする話である。おかげで、これを読んでいた二晩とも夢を見た。
『童石』でも主人公の高校生が夢の中で童石の来歴を知る。両者に共通して壁抜けのエピソードがあった。一方はフランスの大聖堂の中へ出入りするシーンで、もう一方は修行中に壁抜けの技を会得し次の石抜けで、と物語が進む。

迂生は寝付きは良くて、割と夢を見る方だと思う。夢はだれでも見ているらしいから、よく覚えているといったほうが正しいのか。それでも起きたとたん忘れてしまうことが多い。
尾篭な話で恐縮だが、ときどき小便をする夢を見てハッと目覚めることがある。小さいころ小便する夢でおねしょしたトラウマが癒えていないのだ。もちろん、今は大丈夫やけど。
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by rurou-no | 2014-11-13 15:02 | 言葉・本

9月の十三夜

3ヶ月続けて月見ネタとはつまらんが、特別な月だったことを記録しておくためによしとする。
昨夜の月は、一生に一度だけしか見られない「後の十三夜」だった。
古くから名月とされていた旧暦8月15日(十五夜)と9月13日(十三夜)の月、その十三夜を2度も見られるのが閏9月がある年。前回は1843年(江戸時代・天保14年)だったから、実に171年ぶりというわけだ。以上、昨日連れ合いから聞いて知った。

いつものように月明かりの下、夜道を歩く。足元を照らす懐中電灯がなくても十分に明るい。歩きながら子どものころを思い出していた。当時は街灯もなく、夜ともなれば真の闇だった。ゆえに月夜の明るさは際立っていた。子ども心に「昼間みたい」と、不思議な高揚感のようなものを感じていたのを覚えている。

ともあれ、月暦を意識していなければナンノコッチャと意味不明であろう。「一生に一度」「171年ぶり」と騒いだところで月は月で変わりはなし。それでも月とともに暮らしを営んでいた時代が確かにあって、月へ供え物をしたり、月へ祈りを捧げたりする習慣を、私たちの先祖は生活の中に組み込んでいた。そこに多くの月物語も生まれた。そうした豊かな振る舞いを畏怖したい。

そんな秋の夜長に読んだのが、村田喜代子 『光線』 。短編集で表題作は放射線治療する癌患者の話だった。このところ、田口ランディ 『キュア』 、熊谷達也 『虹色にランドスケープ』 と癌患者が出てくる小説が続いた。例によって連れ合いが図書館から借りてくる本を横から読んでいるので、たまたまテーマが重なっただけだと思う。

その中にあった 『山の人生』 が興味深かった。宮崎県の山村が舞台になっていて、山深い村を訪ねた主人公が「追原」「人首」「不帰之」の地名への疑問から、老人がある年齢になると山の上へ追いやられる「爺捨て」が行われていた話を聞く。すると同行者も、中国雲南省の奥地では爺さんが60歳になったら村を出て行く決まりがある、という話を始める。

『楢山節考』 は深沢七郎の小説で、姥捨て伝説が題材になっていた。今村昌平監督の同タイトルの映画も見た。雲南省の伝承に倣うと、不肖迂生も「爺捨て」される年齢だ。もはや自分がそんな立場にあるなんて、なんとも痛快な気分ではないか。
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by rurou-no | 2014-11-06 15:40


一瞬を、永遠に
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