1980年にイタリアの記号論学者
ウンベルト・エーコ が発表した
『薔薇の名前』 。
中世の北イタリアにあるカトリック修道院が舞台になっている。
記号、隠喩、引用、暗号などが随所に散りばめられた難解な小説が1986年に映画化された。
監督
ジャン・ジャック・アノー 主演
ショーン・コネリー クリスチャン・スレーター
1327年北イタリア山地にあるベネディクト派修道院で修道士の不審な死が相次ぐ。
その謎を解いていく2人の修道士。鍵となるのはキリスト教徒にとっての「笑い」論争。
笑うことを禁じられていた当時の修道士たち。禁書となっていたギリシャやローマの古典。
怪死したのは挿絵画家。知の宝庫としての図書館の迷宮。異端審問。
綿密なる時代考証で建築物から衣裳、小道具、そして自給自足の修道士の生活に至るまで
徹底して14世紀の修道院を再現したそうだ。重苦しい雰囲気が全体を包んでいる。
キリスト教の歴史に詳しくないから、様々な記号や引用がさっぱり解らないながらも、映像を
追いかけるだけでも面白い。スクリーンの向こう側に14世紀の世界が広がっているのだ。
とりわけ図書館と書物の重厚さが印象的だった。図書館を牛耳る盲目の長老の名がホルへ
となっているのは、
ホルへ・ルイス・ボルヘス からだというのは私でも分かる初級編。
テーマの構造が複雑なあまり、途中で置いて行かれそうになったものの心に残る映画だった。
『薔薇の葬列』 は実験映画の旗手
松本俊夫 が1969年に劇場用長編として撮った作品。
1960年代末期六本木のゲイボーイだった美少年
ピーター のデビュー作でもある。
スタンリー・キューブリック が
『時計仕掛けのオレンジ』(1972年)で、ピーターのメイクを
参考にしたそうだ。16歳のビジュアル系 ピーターの出現は、
丸山明宏 以来の事件だった。
60年代の新宿、母親を殺し父親と寝る少年。虚実入り乱れたストーリーがスリリングに展開。