ちょっと息抜きのつもりで、上方落語を。但し、実際に聞かないと面白くない。
『厩火事』 は、髪結い稼業のお咲さんが夫婦喧嘩の愚痴を云うため兄さん(亭主の兄貴分)を
訪ねたところから噺が始まる。お咲さん(女)と兄さん(男)の演じ分けに技量が問われるネタだ。
仕事で帰りが遅くなっても、「おつかれさん」の一言もなく帰りが遅いのを怒る亭主に愛想が
つき別れたいと云うお咲さんに、兄さんは唐の孔子さん(物干しの小牛さん)の話をする。
留守中に厩が火事になり可愛がっていた馬が焼け死んだにも拘らず、馬のことは咎めずに
弟子の体を心配したから、弟子はより一層孔子さんを尊敬するようになった。
さる大家の旦那は焼物を趣味にしていた(猿の大将の焼き芋)。大切な焼物を片付けようと
奥さんが二階から降りる途中で足を滑らせて下まで落ちた。旦那は焼物が割れなかったか
心配したが、奥さんの体のことは言わなかったため奥さんは実家へ帰ってしまった。
亭主の本心が知りたかったら、大事にしているお椀を割ってみろと知恵を授ける。
いわゆる「髪結いの亭主」である。女房が働いている昼日中から、上等の刺身を肴に銚子を
5~6本もかたむけている。極道亭主、羨ましい限りだ。根っから生活力のない小生も憧れた
暮らし。現実は、人見知りする上に商売っ気がない名前だけの商店主と連れ合いになった。
「髪結いの亭主」への道は厳しい。
パトリス・ルコント 監督の
『髪結いの亭主』(1990年)は、フランス映画らしい官能性に
満ちた作品だった。客の髪を切る女、それを見つめる男、それが終わるとセックスをする毎日
が繰り返される。2人の間には究極の愛だけがあり、他には何もいらない。
ジャン・ロシュフォール と
アンナ・ガリエナ が主演。
マイケル・ナイマン が音楽をしていた。
「愛してるふりは絶対しないで」と女が言う。そして愛が消える前に女が消えた。