アメリカ映画でハリウッドとは違う、もう一つの映画があることを世界中に知らしめたのは
ニューヨーク大学フィルム・スクール出身の
ジム・ジャームッシュ 。
彼の映画は、ミュージシャンの ジョン・ルーリー とともに記憶しているほど極めて音楽的
な作品となっている。それもアヴァンギャルドでヒップな音楽としての。
ジム・ジャームッシュの作品で初めて見たのは、
「ダウン・バイ・ロー」(1986年) だった。
映画が始まった瞬間、その虜となっていた。車を走らせながら撮った家並が映し出されていく。
バックにはジョン・ルーリーの音楽が流れる。モノクロの画面での効果を充分に計算したセンシ
ティブな音楽と映像であった。出演は
トム・ウェイツ、ジョン・ルーリー、ロベルト・ベニーニ
の3人で、それぞれの個性がなんとも言えない味を出していた。
矢も盾もたまらず、レンタル・ビデオ屋さんへ行って ジム・ジャームッシュ を探した。
「ストレンジャー・ザン・パラダイス」(1984) を見つけて借りてきた。ハンガリーからやって
きた娘の世話をすることになる、ニューヨークに住む男の話。ジョン・ルーリーが音楽と出演で。
次に、大学の卒業制作として創ったという
「パーマネント・ヴァケーション」(1980) を。
結局この3本は、コピーしてVTRを持っている。
その後
「ミステリー・トレイン」(89)
「ナイト・オン・ザ・プラネット」(91)
「デッドマン」
(95) と、映画が公開されるたび真っ先に映画館へ駆けつけるファンになった。
特に印象に残っているのは、「ナイト・オン・ザ・プラネット」 だ。 ロサンゼルス、ニューヨーク、
パリ、ローマ、ヘルシンキ、5つの都市の同じ時間にタクシーの中で起こる出来事を綴る。
運転手と客のやりとりが描かれているだけなのだが、とてもドラマチックな日常になっている。
最後のヘルシンキ、夜が明けようとしている冬の街角で3人の酔っ払いが、お互いに体を寄せ
合って立っている姿が、演劇的でダンスの1シーンを見ているかのようにポーズが美しかった。