一枚の CD が幸せを運んできてくれた、と言っても過言ではないくらい このキューバの
ミュージシャンたちが演奏する 「ソン」 との出合いは、素晴らしい日々をもたらしてくれた。
たまたま入った CD ショップで、磁力に引き付けられるように手に取った。
ハバナの街角であろう タバコを咥えた男が歩いている写真。裏返すとスペイン語で書かれた
曲名が並んで、その下に
produced by Ry Cooder とあった。
そう、あの
ヴィム・ヴェンダース の名作
「パリ・テキサス」 の
ライ・クーダーである。
次の年、ヴィム・ヴェンダースが撮った同じタイトルの映画
「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」
が公開される。どうやら
「リスボン物語」 を撮った後、キューバへ渡ったらしい。
レコーディング風景とインタビューを中心に構成された、感性を刺戟する映画だった。
オマーラ・ポルトゥオンド 68歳、
イブライム・フェレール 71歳、
ルベーン・ゴンザレス 79歳、
コンパイ・セグンドは 91歳だった。老ミュージシャンと形容するのが憚れるほど 色っぽくて
若々しく輝いている彼らの姿が美しいと感じた。音楽は年齢を超越する紛れもない見本だ。
その後、来日した BVSC のコンサートへは 残念ながら行くことが出来なかった。
あれから10年経って、コンパイ・セグンドも ルベーン・ゴンザレスも イブライム・フェレールも
この世にはいない。でも、映画の中の彼らの姿は、しっかりとこの目に焼き付いている。
そして彼らの音楽は、私の心の中で生き続けていく。音楽ってええもんや。