ポルトガルへ行ったのは、二つの理由による。
一つは、イベリア半島の最西端へ立って 大西洋を見ること。
水平線が丸く見える 太平洋を眺めて成長し、同じように大西洋を見てみたいと
子どものころから思い続けていた。
地図を開いて、最も海へ突き出ているところを探して そこまで歩いていく。
断崖の端っこに立ち、目の前に広がる大海原へ漕ぎ出した先人に思いを馳せた。
飽きもせず長い時間そうしていた。海、空、波の音、風の音、全てを独り占めする。
今一つは、ファド。
ポルトガルの民族歌謡。「宿命」 という名の叙情歌。
アマリア・ロドリゲス という存在を知ったばかりに、ファドの虜となってしまった。
リスボンの下町の裏通りにあるレストランで、ギターラとヴィオーラを伴奏にファドの
ライブをしていた。食事をするだけのお金を持っていなかった私は、ドリンクだけで
今は名前も覚えていない女性歌手のファドを聴いた。マイクを通さない生の声で。
ファドは日本でいえば演歌のようなもの と例えられることがある。明らかに違うのは
ファドは何時間でも聴いていられるが、演歌はすぐに頭が痛くなってくることだ。
それでも
美空ひばり を聴いて、日本の流行歌のファンになった 外国人を思い
自嘲しないこともないが。