「しんしゃく」と「そんたく」は語感が似ていて、意味も似たところがあると思うので、改めて新明解さんに登場してもらった。 【斟酌】①先方の事情を考慮に入れ・る〔て穏便に取りはからう〕こと。(以下略) 【忖度】「他人の気持ちをおしはかる」意の漢語的表現。 【空気を読む】昭和49年11月発行の新明解国語辞典第二版にはこの語はない。
わざわざややこしぃ漢字を並べたのも、先月下旬「空気を読んでいては、空気は変わらないんです」と話す大澤芙実さんの姿に胸を打たれたからだ。いつの頃からか、この「空気を読む」という同調圧力を含む嫌な言い方が流行語になっていて、穏やかならぬ心持になっていた。
そんな鬱屈を大学2年生の彼女が的確な言葉で晴らしてくれた。
大澤さんの発言は、10月25日法政大学で開かれたシンポジウムでのこと。ネットの動画を見て恥ずかしながら感極まってしまった。彼女の一言一言が老爺の心に響いてきたのだ。
一部抜書きすることを許していただきたい。「草案では、国家権力を縛るための憲法が私たちを縛ろうとしていますが、中身のない言葉ではもう私たちを動かすことはできません。それは、この夏、心を持つ私たちが決して無力なんかじゃないことを知ったからです」
「当たり前に順応するのではなく、何を当たり前にしたいのか、常に思考し行動し続けること。どうやらそれだけが未来を連れてきてくれるようです。空気を読んでいては空気は変わらないんです。そのことを、デモをするたび、街宣をするたび、一緒に声を上げる名前も知らない人が、その勇気でもって教えてくれました。武器を持ち、人を殺すことが普通の国だというのなら、私はその普通を変えたいんです」
「こんなにも人のぬくもりを感じた夏はなかった。こんなにも自分が生きていることをかみしめた夏はなかった」
「私の言葉を理想論だとか、綺麗ごとやと笑う人がいるかもしれません。でも希望も語れなくなったら本当の終わりです。だから、私は明日からも路上に立ちながら、大いに理想を語ります。夢を語ります。それは、そうやって社会を作っていくのが、これからを生きるすべての人に対する私の使命やと思っているからです」
約11分、時々手元のスマホのメモを見ながら静かに、そして力強く発する言葉は、年寄りのからだの奥底まで染み入った。