「招き猫」は縁起物として馴染みのものである。全国各地にさまざまな「招き猫」があり、国内のみならず外国にもあることを民博のコレクションに教わった。
右手(右前足)を上げているのは金運を招き、左手(左前足)を上げているのは人と縁を招く、ほかに右手は家族円満、左手は商売繁盛、という説もある。
どちらにせよ、適当に後付けしたのだろう。ええんちゃうの、縁起物やし、てなノリで。
今回は「招き猫」ならぬ「招かぬ猫」。この離れ家に越してきてからずっと困っている。
母屋の主は遠方に居住していて、法事など特別な時しか帰ってこないので、ほとんどは親戚関係の別荘のような使い方だから、そうなってしまったのは無理もない。
困っているのは、近所の猫共に、ここの庭を排泄場所として指定されていることである。
猫の糞の後始末に追われて1年半、毎日庭を見廻るのが日課となってしまった。
やってくるのは黒、白黒のブチ、三毛の3匹だ。黒猫は首に赤い紐を巻いているから飼い猫かもしれない。あと2匹は野良か。近ごろ三毛猫の姿が見えないけどどないしたんやろ、なんて心配している場合ではないぞ。
躾がされていないため、ところかまわず状態で、慣れないうちは草取り中によく踏ん付けた。
一度、猫が嫌がるという粉末を撒いてみたこともあったが、あまり効果があったとは思えない。
不快な匂いは猫よりむしろ人間にダメージが大きく、却下。
そこで考えた。脱糞の後、足で砂(土)をかける猫の習性を逆手にとってみようと芝生を植えたが、これは関係ないようだ。なんとなく草をかける努力をした跡があるのは笑える。
まあ、芝生は猫対策というよりも、晴れの日は土埃が舞い、雨の後は水捌けが悪くドロドロにぬかるんでいた庭の難点を解消する、という本来の目的を達成したからそれでよし。
今のところ、されるがままの糞問題は一向に解決の目途が立っていない。
平和的に共存したいという当方の思いを知ってか知らでか、猫様は我が物顔に振舞う。
名案が浮かばぬうちは毎日せっせと片付けるほかない、と半ば諦念の心持ちだ。
それにしてもウンは招かず、フンを招く猫やなんて冗談やないっ、トホホ。