昨日の夕方、庭の草取りをしていたら子どもの声がしたので顔を上げると、背中のランドセルを揺らして下校する小学生の姿があった。もう2学期が始まったのか、と思いがけず季節の移ろいを知らされることになった。8月下旬は慌ただしく、どこか追われているような感じだったが、あの小さな子のランドセルが日常の時間に引き戻してくれた。
1日付けの新聞(まだ現実の時間とずれがある)を手に取ると、1面に「準決勝 史上最長延長50回」の見出しがあった。全国高校軟式野球大会で、中京高(岐阜)と崇徳高(広島)が0対0のまま延長戦になり、なんと4日間50回、計10時間18分の死闘を繰り広げたそうだ。
スコアボードに99個の0は前代未聞、さぞ壮観な眺めだったろうと思う。
球場の熱気はいかばかりか、両チームとも一人の投手が最後まで投げぬいたというから驚きだ。試合中は気力で投げられただろうが、肩を壊してやいないかと心配になる。
恥ずかしながら迂生も、中学時代に野球部の投手をしていたので、どれだけ苛酷なことか想像するくらいはできる。ちなみに2年からレギュラーに抜擢されたもののとっても下手な選手で、投手としてもコントロールがなくほとんど使い物にならないレベルだったことを自白する。
負けた崇徳高は広島市西区にある。20日未明に発生した土砂災害で死者72人、行方不明者2人の犠牲者を出したのは同市安佐南区と安佐北区。私立校だけに、野球部員の家族や親戚にも被災者がいたのではないかと気になるが、メディアではそういうことは伝えられていない。
広島市の惨状を見て、3年前の紀伊半島大水害を思い出した。土石流と土砂が家を押し潰し、押し流した光景はそのまま那智勝浦町と重なる。和歌山県で死者・行方不明者61人、奈良県で死者・行方不明者24人の犠牲者が出た。9月3日未明の出来事だった。
自然災害は人間の力ではどうにもならぬ想定外の事態が発端となることが多い。だから被害が大きくなる。この広島市でも、「新しい住宅が目立つのはもしかして」と直感したとおり、被害が広がったのは無茶な住宅開発が一因とも指摘されている。
近くに山があればきちんと山と向き合い、海があれば海と向き合う、という当たり前のことをおろそかにしてはいけない。だから津波対策に大堤防なんて、もってのほかなんや。