連れ合いが3日間、家を空けることになった。
「ヒマやと思うし」と、残していったのは図書館から借りてきた3冊の本。どれも新入荷本ばかりなのか、カバーに帯(作家の椎名誠はこれを「腰巻」と呼んでいた)まで付いたままだった。
赤坂真理 『東京プリズン』 、朝井リョウ 『何者』 、中島京子 『のろのろ歩け』 (以上、読んだ順番)。ちょうど読んでみたいと気になっていた本を、なぜ知ってたんやろ。
それぞれから、フムフムとうなずいたことばを拾い出してみよう。
『東京プリズン』は、アメリカ・メイン州の小さな町へ留学した16歳のマリが、戦後連合国によって行なわれた「東京裁判」(極東国際軍事裁判)で問われなかった、天皇ヒロヒトの戦争責任があるか否かについてディベートに挑むという内容。学校で学ぶ機会もなくあいまいにされたままの、近現代史を問い直す意欲的な試みである。誰も責任をとらないあり方は、この国のしきたりなんやろか。
「桁外れの死者が出ると、その死には目的があり、その目的は崇高なものであると言わなければ、人の心がばらばらになってしまう」「人は自分をを支える物語なしに生きてはいけないんだよ」と、アメリカ南北戦争について話す同級生のアンソニー。
『何者』は就活大学生5人の日常。みんな何者かになりたくてフェイスブックやツイッターで発信する、今どきの学生たち。アカウントを2つ持ち、表の顔と影の部分の本音を使い分ける複雑な心理。
サワ先輩のことば「短く自分を表現しなくちゃいけなくなったんだったら、そこに選ばれなかった言葉のほうが、圧倒的に多いわけだろ」「だから、選ばれなかった言葉のほうがきっと、よっぽどその人のことを表しているんだと思う」
『のろのろ歩け』は異国での3話。『北京の春の白い服』では茶湯(チャータン)の屋台の主が「慢慢走(マンマン・ゾウ)」=のんびり行けや、と声をかけてくれた。『時間の向こうの一週間』のイーミンは雲南へ行くという。そこは「失敗者的天堂」=負け犬の楽園(ルーザーズ・ヘブン)といわれるリラックスの地だとルー・ビン。『天燈幸福』で「仙人術」をマスターした趙先生は「私は薬など使わなくても、台所にあるあらゆるものが病気や体の不調を治療できることも学びました。たとえば酢、塩、トウガラシ、ネギ、胡椒、塩。みんな薬になる。にんにく、白菜、キャベツ、スイカの皮もそう」と語る。